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【教科長座談会】難関国公私立高校 2024年入試を振り返って

インタビュー入試分析

SAPIX中学部では、国立大附属高と難関私立高、早慶高、都県立高の入試が終わった段階で各教科の教科長が集まり、2024年の入試の出題傾向などについて振り返る座談会を開きました。

今年の入試ではどんな傾向が見られたのでしょうか。それを踏まえて、来年以降の受験生はどんな学習をすればよいのでしょうか。座談会の概要についてまとめました。

  • この座談会は2024年2月28日(水)に実施されました。

開成高・筑駒高・国立大附高

開成は数学・国語で高得点勝負に
筑駒の物理はまれに見る難問が

磯金(英語) まず開成高の英語は、昨年(2023年)に比べ、合格者平均点・受験者平均点ともに下がりました。要因は語彙と文法問題が難化したことです。その語彙と文法問題の新傾向として出てきたのが、英語で書かれた単語の定義から判断して正しい単語を書くような、いわゆる“英英辞典問題”的な設問です。

例えば、「talent=才能」と知っていても、英語で書かれた定義から「talent」という単語を答えるという形式は、受験生には難しく感じられたと思います。

筑駒高の英語は今年(2024年)も読解力・記述力が問われました。物語の主人公にとってスニーカーがどんな意味を持つのか、60字以内の日本語で記述する問題です。これは物語の結末の面白さを記述するという昨年の問題と傾向が似ていて、受験生が読み手として物語をどう解説するかという思考力・記述力が試されました。

また、自由英作文のテーマはことわざで、“Action speaks louder than words.”について賛成か反対の立場を表明し、その理由と自分の考えを50~60語で記述するものです。

ことわざを使った問題は以前にも出ていましたが、今年は英語で書かれたことわざをまず日本語で解釈し、さらに自分の考えを英語で書く点で以前より難度がアップしました。指定語数も10語増えているので、より長い文章の作文が求められる傾向にあります。

今野(国語) 開成高の国語は大問3で古文の代わりに漢詩が出題された点が目を引きました。

これまでにも、漢文の書き下し文を含む現代文が出題されたことはありましたが、古文が全て漢詩に置き換わったのは初めてです。しかし、その大問中の設問の多くは、受験勉強をしていれば対応できる基本的な知識問題でした。

そのため、結果としては大問3が、この10年で2番目に高い受験者平均点を下支えしたものと考えられます。

筑駒高の国語は今年より記述の解答欄が行分けされたため、従来とは異なり、際限なく書くことができなくなりました。これは簡潔なまとめが求められているということです。

国立大附属高では大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の影響で、複数の資料や文章を扱う新傾向の問題を積極的に取り入れる傾向が継続的な変化として挙げられます。

理科 理科では、筑駒高の今年の物理は過去数十年で最も難しかったと思います。

開成高も近年、物理が難しく、今年も筑駒高ほどではないにせよ、重めの問題でした。

物理の難問にはうわべだけの学習では対応できないので、仕組みを理解することを徹底的に繰り返すことが大事です。基本・標準問題を繰り返し、人に説明できるくらいに深く勉強しましょう。難問を広く浅く解くのは最も非効率な勉強法です。

瀧島(社会) 開成高の社会は昨年より答えにくい問題が減り、平均点が上がりました。時事など社会への関心を意識した問題が目立ったものの、受験生が一般的にこなしてきた時事対策をうまくかわすようなタイプのものでした。

例えば、NATOに新たに加盟を申請した国はフィンランドとスウェーデンですが、問題の内容はそれらの国がNATOに加盟すると自国の安全が強化される理由を記述させるものでした。

また、空き家をリフォームして住んだとき、それが社会貢献になる理由について記述させるなど、社会に興味・関心の高い受験生が得点しやすい問題が例年より目立ったように思います。

筑駒高は年々易化傾向にあり、今年も昨年に比べて答えやすい問題が増えました。

それでも、難度は他の国立大附属高よりかなり高いので、より点差のつく展開になったと推測されます。また、毎年1~2問出される記述問題が今年はなかったため、時間に多少のゆとりがありました。

その一方、記述の部分点が一切ない中、記号選択問題だけで戦うというごまかしのきかない展開になりました。

核兵器禁止条約の第1条にある七つの文章を読んで、条約違反にならないものを六つの選択肢から二つ選ぶ問題など、実用的な文章を読み解く力を高いレベルで要求する問題もありました。

青木(数学) 数学では、今年の開成高は合格者平均点も受験者平均点も、同校が平均点を発表し始めた2002年以降で最高値でした。

その要因は解き方に悩むような問題が少なかったからでしょう。また、途中式などの記述が不要で、答えだけ書けばよい問題も全18問中11問ありました。

開成高2024年入試 数学 問題・解答はこちら

筑駒高もほぼ例年通りの傾向でしたが、整数系の問題が定番の大問2が取り組みやすくなりました。

これまでは記載されているルールに従って、どんな規則があるのか、その場で探っていかなければなりませんでした。そのため、ハードルが少し高かったのですが、今年は調べ方が分かりやすい問題になっていました。

ただ、平面図形や円の問題が出される大問3が今年は少しやりにくかったと思います。

他の国立大附属高も大きな変化は見られませんでした。

筑波大附高とお茶の水女子大附高では、新学習指導要領に新しく入った「データの活用」の分野からの問題が、今年も大問で出されました。

今年は条件やグラフなどをしっかり読み取り、丁寧に解き進めていくことが必要で、難度が上がった感じがします。

慶應女子高

傾向に大きな変化はなし
英語は自由英作文の難度がアップ

英語/磯金 俊一

磯金(英語) 英語に大きく変わった傾向はありません。

2021年にリスニングがなくなった代わりに図表の読み取りが加わり、長文が3題という構成になりましたが、今年はその図表の読み取りがなくなり、長文4題になりました。

大問のテーマの一つはジェンダーギャップで、最後の大問はダイバーシティについて書く自由英作文でした。

ダイバーシティの方は言葉の定義を説明するのではなく、受験生自身が「多様性を感じた経験」について記述するものだったので、これまでの自由英作文より難度が一段上がりました。

今野(国語) 国語は100年前の出来事を取り上げた問題が2年連続で出ています。

昨年はスペイン風邪が流行した時代を舞台とした小説が、今年は関東大震災を体験した筆者の見聞をまとめた随筆が出題されました。ただ、設問の構成自体は慶應女子高らしいもので、傾向は変わっていません。受験生は解答欄を埋めることはできたと思われるので、難しく感じた人はあまりいなかったのではないでしょうか。

しかし、細かく見ていくと、自分の言葉で置き換えて説明したり、足りない点を補って表現したりしなければならないところが随所にあるため、真の難度は受験生が試験中に感じていたよりも少し高いと思われます。

早大学院・早実高・早大本庄学院・慶應義塾高・慶應志木高

早実と慶應義塾の英語は難度が突出
早大学院の国語は時間との勝負

数学/青木 茂樹(『高校への数学』執筆者)

青木(数学) 早慶高の数学の傾向は全体として大きく変化していません。

昨年はかなり難しかった早大学院と早大本庄学院ですが、今年は難度が抑えられ、特に早大学院はやりやすくなりました。慶應義塾高も近年の難化傾向が収まり、解きやすくなっていました。

磯金(英語) 英語では、5校の中で長文問題の難度が抜きん出ているのは早実高と慶應義塾高です。

慶應志木高では昨年初めて自由英作文が課され、今年も出題されました。また、英語のことわざと日本語のことわざを結ぶ問題がありましたが、英語のことわざが12なのに対し、日本語の選択肢は18だったので、正しい組み合わせを選ぶのに苦労したはずです。

早大学院は長文問題で、物語文の中で触れられている手話の形をイラストから選ぶ問題が出されました。早大本庄学院では高いレベルの知識が必要となる文法問題が出されました。

今野(国語) 国語では、出題傾向が定まらなかった慶應志木高が、2022年からの3年間は比較的オーソドックスな形式に落ち着いています。それに伴い、以前は50点を切っていた受験者平均点がここ2年間は67点強にまで上がりました。2024年もかなり高い点数が予想されます。

国語/今野 拓実

一方、慶應義塾高の問題量は例年、60分の試験時間に対してゆとりがありましたが、今年は記述問題の数がかなり増加したため、解答欄を埋めきれなかった受験生もいると思われます。

また、早大本庄学院の今年の問題は標準レベルで、昨年に比べてやりやすくなりました。

早大学院も同様でしたが、近年は不適切なものを解答するのが記号選択問題の基本形として定番化しているので、少しやっかいです。

もともと同校は出題される文章が難しく、抜き出し問題が主体なので、そうした文章の中を探し回る時間が必要でした。それに加え、選択肢を文章と照合する手間が増えたため、時間配分がよりシビアになっています。

都立日比谷高など 難関都県立高

国語は全分野で満遍ない力が必要
共通テスト・新学習指導要領の影響も

今野(国語) 難関都県立高の国語は、どの分野も満遍なくできないと、必要な点数に届きません。

例えば、千葉県では漢字が16点分くらいあるので、読解はできても知識が弱いと得点を伸ばせません。

また、国公立高は共通テストの影響を受けやすく、今年は神奈川県が象徴的でした。

これまで大問5では、グラフと図表の読み取りと会話文が出題されていましたが、今年は複数の文章を読んだ中学生のメモやまとめを完成させるといった問題に衣替えしたのです。

磯金(英語) 英語の難度は、都立進学指導重点校以外、だいぶ配慮されています。それでも4~5年前から長文が少しずつ長くなりつつあり、複数資料を読み取るという共通テストの影響も出てきています。

理科 理科は今年、都立高では完答問題が減った分、文章記述問題が増え、バランスは取れていましたが、問題内容を比べると昨年より易化しました。文章量が多いので、読む練習をしておくことが大事です。

ただ、文章が長くても聞いている内容は基本事項が多く、学習した内容にしっかり結び付けられるので、基本的な知識や仕組みを理解し、日頃から問題文を読む努力を怠らないようにしましょう。

瀧島(社会) 社会は新学習指導要領になってから教科書のボリュームが増えたので、出題される範囲が増えた分、難度は上昇傾向にあります。

教科書本文で強調されている部分だけでなく、欄外の資料やコラムといった細部から出題されることもあるため、対策に時間をかけなくては高得点を取れない傾向にあります。

磯金(英語) 都立進学指導重点校でいうと、日比谷高の英語は社会的な題材が多いですが、今年は環境に配慮した新しい建築資材や、脳の「忘れる機能」を題材にした文章が出題されました。

印象的だったのは国立くにたち高で、2進法を用いた暗号解読の対話文が出たことです。数学的なアプローチを必要とする傾向は近年の国立高の特徴といえます。

今野(国語) 国語は、各校とも漢字の読み書きと現代文3題という構成は同じです。その中で各校が特徴を出そうとしているのですが、分かりやすいのが青山高で、いわゆる複数文章を積極的に取り入れています。

また、今年は国立くにたち高も会話文を出題しました。
以上の学校が新傾向に比較的積極的ですが、7校の中で上位に位置する日比谷高や西高などは新傾向の問題にあまり食い込まず、受験生の得点状況を見ながら難度やボリュームの微調整をしています。

都立高の共通問題と進学指導重点校の自校作成問題で大きく異なるのは、まず論説文の難しさ。進学指導重点校は読むことに対する負荷が大きいです。難解で抽象的な文章を好んで出題するので、それに対する訓練が必要です。

青木(数学) 都立進学指導重点校の数学は難度が落ち着き始め、各校が特徴を出し始めている印象を受けます。

例年、自校作成を行う学校の問題は大問が四つで、その2・3・4で記述問題を設けるのが大枠の傾向ですが、日比谷高は今年、大問4では記述がありませんでした。

難関校に共通する出題トレンドと学習アドバイス

問題の見せ方や問い方が変化
根拠を突き詰める丁寧な学習が鍵

磯金(英語) 英語の長文の題材はフィクション(物語文)とノンフィクション(説明文)に大きく分けられます。

今年は難関校のみならず、広く首都圏の高校で物語文の出題が目立ちました。筑駒高に代表される「言語を味わう」「行間を読む」力は物語文で求められるものです。

英語学習の取っかかりとしても、物語文に興味を持ち、能動的に読む姿勢が望ましいと思います。さらに、新学習指導要領で高校範囲から新しく入ってきた仮定法などを狙って出題するのが、都県立高に限らず、ここ3年の全体的なトレンドになっています。

また、志望校で英作文が出る場合は添削を必ず受けましょう

今野(国語) 文章の題材はおなじみのテーマのみならず、多様性の問題やポスト・コロナなどの新しいものからも積極的に選ばれるので、そうした新しいテーマにも幅広く触れながら、読解力の土台作りをしていくのがいいでしょう。

時事に対するアンテナは当然張り巡らした方がいいですし、読解の土台となる知識として、語彙の拡充を図るためにも、低学年のうちから入試の文章によく出るような言葉の意味調べをきちんと行いましょう。その上で、得点できる問題は変わらず一定数あるので、そこを必ず取れるような学習をしましょう。

理科 コロナ禍が落ち着いたからか、理科は近年、DNA関連の問題が増加気味のため、問題を通してDNAやRNAの仕組みを理解しておきましょう。

また、「読む」忍耐力を付けなければならないのは、どの難関校でも同じです。そして、物理の勉強は慎重に。悩んだら早めに講師に相談しましょう。

社会/瀧島 一裕

瀧島(社会) 共通テストの影響で、社会は暗記教科ではないというメッセージ性が高まっています。

出題範囲自体は教科書の中からという学校がほとんどですが、そこに行き着くまでに長い文章を読んだり、複数の資料を検討したりという出題の仕方が増えています。

入試問題に比較的よく使われるような資料だと難度が下がり、多くの受験生が初めて目にするような資料だと、その場でスピーディーに処理する必要があるので難度が上がります。そうした見せ方の工夫で難度の調節をしています。

高難度の問題に対処するには、さまざまなタイプの問題を経験し、解法の引き出しを増やしていくトレーニングが必要です。

青木(数学) 数学は今年、明らかな難問はありませんでしたが、その分、読解力や処理能力が必要な年だったといえるでしょう。

「データの活用」の分野からの出題は、新学習指導要領への移行期間が始まった数年前より多くなりました。少し前は教科書に出ている用語を知っていれば対応できる程度でしたが、今年はさらに踏み込んだ問題で、大問で問われたり、じっくり考えたり調べたりしないと解答が得られないものが増えました。

共通テストの影響という点では、以前なら会話文で書かれた問題文が多かったのですが、今年は長い文章をその場で読み、流れや意図を考えながら解き進める問題が目立ちました。

また、今日の話を聞いていると、全教科を通して問題の見せ方や問い方が変化しつつあるようですね。

数学なら、昨年までは計算して出した解答が自然数などきれいな数字の場合が多かったのですが、今年は受験生が不安になるような、いわゆる“汚い数字”のケースも多く見られました。

学習の姿勢としては少し難しい問題でも粘り強く考えることをこれまで以上に意識しましょう。地道に数えたり調べたりする問題に対応するため、普段から間違えた理由を追跡したり、途中式をきちんと書いたりするなど丁寧な勉強が必要です

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