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初歩から分かる、都立高校入試の仕組みと対策。入試制度から内申点、心構えまで

入試制度解説

「都立高校の受検を考えてはいるが、入試制度などが複雑でよく理解できない」「情報収集の必要性は感じているが、何から手を付ければ良いか分からない」といった方々へ向けて、都立高校入試を理解するための「最初の一歩」となるようなトピックスを厳選しました。それらをQ&A形式で解説します。

都立高校の入試方式や合否判断

Q.都立高校には、どのような種類の入試があるのですか。

A.都立高校の入学者選抜は、「推薦に基づく選抜」と「学力検査に基づく選抜」の二種類に大きく分けることができます。推薦に基づく選抜は、さらに「一般推薦」と「文化・スポーツ等特別推薦」「理数等特別推薦」とに分けられますが、後者の特別推薦は限定された実施校や募集人員でのみ行われるものです。また、学力検査に基づく選抜には、第一次募集での欠員を補充するための「第二次募集」や、定員を分割することで入試日程を前期・後期に分ける「分割募集」という形態もありますが、こちらも限られた学校でのみ実施されます。

  • 本記事では以下、推薦に基づく選抜のうち一般推薦のことを「推薦入試」、学力検査に基づく選抜のうち、第一次募集および分割前期募集のことをまとめて「一般入試」と呼称します。

Q.都立高校入試の実施時期について教えてください。

A.推薦入試は1月下旬、一般入試は2月下旬の実施です。推薦入試で残念ながら不合格となった場合でも、一般入試で同じ高校に再チャレンジすることも可能です。推薦入試での不合格が、一般入試の合否判断で不利に働くということもありません。

Q.都立高校に推薦入試で合格した場合でも、国立大附属高校や私立高校に進学したり、他の都立高校の一般入試を受験したりすることはできますか。

A.できません。「東京都立高等学校募集案内」では、「推薦に基づく入試」の応募資格欄に「本校を第一志望とするもの」と明記されています。ある都立高校に推薦入試で合格した場合には、原則としてその高校に進学しなければならない点に注意しましょう。また、同案内の「学力検査に基づく入試(第一次募集・分割前期募集)」の応募資格欄には、「都立高校に合格した者は応募できない」という旨が記載されていることから、他の都立高校の一般入試には応募自体ができなくなります。

Q.推薦入試と一般入試の募集人数に違いはありますか。

A.推薦入試の募集人数は全体の20%までと決まっています。都立高校(普通科)の大半では推薦入試の募集人数を20%としています。一般入試では、定員から推薦入試での選抜者を除いた人数が募集されます。

Q.2022年から実施された「男女別定員制の緩和措置の拡大」について教えてください。

A.東京都立校には1950年(新制高等学校移行)から既に男女別定員制がありましたが、時代の変化とともに男女別定員制の緩和が検討されるようになり、1998年から緩和措置が実施されました。ただし、緩和措置の実施は校長の判断にゆだねられ、2021年は全日制普通科110校のうち42校が実施していました。

この緩和措置を段階的に拡大していくことが決まり、第一段階として、それまで「約40%の高校」で実施されていた緩和措置を、2022年度からは「全ての高校」で実施することにしたのです。そして、第二段階として2023年度から男女別定員の緩和の割合を10%から20%に増やし、第三段階として、2024年度以降早期に男女合同定員に完全移行することとなっています。(2022年9月現在)

段階 緩和 時期 解説
第一段階 男女別定員のうち10%を男女合同で決定する措置を全校に拡大して実施 2022年度 一部の学校から全校に拡大
第二段階 男女別定員のうち20%を男女合同で決定する措置を全校に拡大して実施 2023年度 割合を「10%」から「20%」へ拡大
第三段階 男女合同定員に移行 2024年度以降早期 完全移行

なお、東京都立校において男女別定員制が実施されているのは全日制普通科のみで、定時制や全日制の専門学科は既に男女合同定員です。

Q.推薦入試の合否判断基準について教えてください。

A.「調査書」を点数化した「調査書点」および、各学校が独自に実施する「集団討論・個人面接や小論文または作文など」に、出願書類の内容が加味されて合否判断が行われます。なお、どの学校でも、点数化されるもののうち、調査書点の割合は50%が上限と定められています。一方で、集団討論・個人面接や小論文または作文など点数の割合は、学校ごとに異なります。

推薦入試の点数の割合例

日比谷高校 調査書点450点(50%) 集団討論・個人面接200点 小論文250点
西高校 調査書点360点(40%) 集団討論・個人面接240点 作文300点
  • 上記に加えて、出願時の提出書類の内容を勘案し、合否が判断されます。

Q.中学校英語スピーキングテスト「ESAT-J」とはどのような試験ですか。

A.「ESAT-J(English Speaking Achievement Test for Junior High School Students/イーサットジェイ)」は、英語を「話すこと」の能力を測ることが目的のテストで、2023年2月の学力検査に基づく選抜から活用されることになっています。

受験対象は東京都内公立中学校に在籍する3年生で、都立学校や民間施設などで行われます。2022年は11月に実施される予定で、12月に予備日も準備されています。A~Fの6段階で評価し、これを20点~0点の4刻みで換算、合否判定に活用します。

出題内容は学習指導要領に準拠したもので、試験にはタブレット端末、イヤホンマイク、防音イヤーマフを使用し、解答音声を録音する形式となります。なお、東京都が実施したプレテストの過去問題は東京都教育委員会の国際教育・東京ポータルのホームページに掲載されています。

Q.一般入試の合否基準について教えてください。

2023年2月に行われる一般入試からは、「調査書点」と「学力検査の点数」、さらに「ESAT-Jの点数」を総合して合否判断されます。点数の割合は、1020点満点のうち、調査書点は300点、学力検査の点数は700点、ESAT-Jの点数は20点です。

調査書(内申)の仕組みと合否への影響

Q.「調査書」や「内申点」とは何ですか。

A.「調査書」は中学校から高校に提出される書類のことで、受検生の成績等が記載されています。そして、記載内容のうち、9教科(英数国理社+実技4科)の成績について得点化した点数のことを、一般に「内申点」と呼びます。なお、内申点には中3生のときの成績が使用されます。

Q.内申点はどのように使用されるのでしょうか。

A.「調査書点」として、入試の合否判断に使用されます。ただし、推薦入試と一般入試とで、点数のウエイトが大きく異なります。推薦入試では、入試の合否判断に用いられる全ての点数のうち、調査書点の割合は50%までと定められていますが、この基準内であれば、各学校が自由に割合を設定できます。一方、一般入試では、全ての点数のうち調査書点の割合はおよそ30%で、各学校とも統一されています。

Q.調査書点(内申)の算出のされ方について教えてください。

A.推薦入試と一般入試とで、調査書点の算出のされ方が異なります。

中学校では1科目の成績が1~5までの成績で表されます。これを9科目で掛け合わせると45点満点になり、推薦入試では、この数値が調査書点として扱われるケースが大半です(一部の学校の推薦入試では、各科目における「関心・意欲・態度」や「知識・理解・技能」などについてA・B・Cの三段階で評価した「観点別学習状況の評価」を数値化し、調査書点として扱うこともあります)。

一般入試では、5科目の成績はそのままの数値で扱われますが、実技4科目については成績の数値が2倍になります。したがって、45点満点ではなく、65点満点となります。これをさらに300点満点の調査書点に換算した上で、合否判断に使用します。

都立高校 一般入試の配点

総合得点(①+②+③) 1020点満点
①学力検査(5科目) 700点満点
5科目(100点×5)=500点を700点満点に換算
②調査書点(5科目+実技4科目) 300点満点
5科目(5×5)+実技4科目(5×4×2)=65点を300点満点に換算
③ESAT-J(中学校英語スピーキングテスト) 20点満点(6段階評価)
A(20点)、B(16点)、C(12点)、D(8点)、E(4点)、F(0点)

Q.調査書点(内申)を伸ばすためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

A.科目の成績は、学習に主体的に取り組む姿勢が加味されるため、定期テストの点数が高いだけでは、良い成績を収めることはできません。

その上でアドバイスをするならば、「人の話をしっかりと聞ける生徒は、高い内申点を取れる傾向がある」ということです。例えば、先生が黒板に書いたことをただノートに写すだけではなく、話の重要なポイントを自らつかみ取り、必要に応じてメモを取るなどといった「主体的な聞き取り」ができること。これは定期テストの得点向上にも結び付きます。また、意見を求められた際に自分の考えを的確に表現することや、同級生の意見を受け止め自分の考えに取り込むといった力を発揮し、積極的に授業に関わる姿勢も役立つでしょう。

内申点、すなわち入試の際の調査書点として使われるのは中3の成績ですが、中1・2のうちから、こうした姿勢を培っておくことが大切で

入試難度を軸にした都立高校の分類

Q.難関とされている都立高校はどこですか。

A.東京都には200近くの公立高等学校がありますが、特に難関校といわれる都立高校は、東京都教育委員会から以下のような指定を受けています。

進学指導重点校

進学実績の向上を明確に謳い、教員の配置や予算面で優遇される一方、その実績が厳密に評価・公表されます。5年更新で現在は、日比谷(千代田区)・西(杉並区)・国立(国立市)・八王子東(八王子市)・戸山(新宿区)・青山(渋谷区)・立川(立川市)の7校が指定されています。

 

進学指導特別推進校

進学指導重点校につづく位置づけの高校。国分寺(国分寺市)・新宿(新宿区)・小山台(品川区)・駒場(目黒区)・町田(町田市)・国際(目黒区)の6校に加えて、2018年から小松川(江戸川区)が指定されました。

 

進学指導推進校

進学指導特別推進校に次ぐ進学実績をあげる高校の中から、地域ニーズ・地域バランスを加味して指定されます。現在は、三田(港区)、豊多摩(杉並区)、竹早(文京区)、北園(板橋区)、墨田川(墨田区)、城東(江東区)、武蔵野北(武蔵野市)、小金井北(小金井市)、江北(足立区)、江戸川(江戸川区)、日野台(日野市)、調布北(調布市)、多摩科学技術(小金井市)の13校が指定されています。

  • 2023年度から、上野(台東区)、昭和(昭島市)が新たに指定されます。

Q.進学指導重点校に入学するメリットはなんでしょうか。

A.入学時に全生徒が同じスタートラインに立ちながら、大学進学に向けた面倒見の良さや、生徒による授業評価の導入といった授業改善へのたゆまぬ工夫と、優秀な仲間と切磋琢磨できる環境があります。都立の入試では調査書点(内申)も重要なファクターとなるため、こうした都立難関校に合格する生徒は、「人の話を聞ける」素直なタイプの生徒が多いともいえます。また、進学指導重点校には伝統校が多く、各界で活躍する卒業生とのつながりが持てるという点も見逃せないでしょう。

Q.「自校作成問題」という言葉を聞きますが、何のことですか。

A.「自校作成問題」とは、その学校が独自に作成した入試問題のことで、共通の学力検査では測ることが難しい、より高度な思考力や表現力を受検生に問うためのものです。その高校がどのような生徒に入学してほしいのかというメッセージが込められているとも言えるでしょう。2022年度現在、進学指導重点校のような難関校で、自校作成問題が使われています。なお、これらの高校においても、英語のリスニングテストおよび理科・社会は他の高校と同じ共通問題が使われます。

  • 国際高は英語のみリスニング問題を含めて自校作成

Q.「ナンバースクール」とはどの高校のことですか。

A.戦前からの歴史を持つ高校のことを「ナンバースクール」と呼びます。これは、例えば日比谷高の旧名が「東京府立第一中学校」であるように、学校名に番号が入っていたことに由来します。ナンバースクールは、東京都ならびにそれ以外の府県においても、名門校・難関校として扱われることが多くあります。

進学指導重点校は八王子東高を除き全てナンバースクールです。なお、八王子東高は1976年創設で、ナンバースクールではありませんが、その優れた指導ノウハウをもって大変高い進学実績を出していて、進学指導重点校に選ばれています。

Q.都立高校は、住んでいる地域によって受検制限はありますか。

A.東京都内に在住であれば、市区町村に関わらず、どの都立高校も受験できます。かつては都内の地域ごとに学区が設けられ、受検できる都立高校が制限されていましたが、2003年度以降からはこの制度は撤廃されました。

併願高校の考え方

Q.私立高校との併願は必ずすべきですか。

A.都立高校が第一志望であっても、私立高校は必ず併願することをおすすめします。合格には学力だけでなく精神面も非常に重要です。前もって合格校を確保しておき、余計なプレッシャーを排除した状態で第一志望の入試を迎えましょう。

Q.おすすめの併願先の見つけ方/受け方はありますか。

A.「この学校なら行きたい」と思える併願先を見つけましょう。都立の一般入試は2月下旬ですが、東京都の私立高校入試は2月中旬に行われ、埼玉県や千葉県の私立高校入試はさらにその前の時期に行われます。ここでいくつか合格を確保しておきましょう。

第一志望に近い難度の学校に合格できればそれが自信になりますし、学校によっては入試得点を開示してくれるところもあるので、入試直前期の自分の実力チェックに役立つ場合もあります。

入試難度の捉え方

Q.推薦入試で都立難関校に合格するのは難しいですか。

A.一般入試と比較すると明らかに難しいといえるでしょう。その要因として、各学校が独自に実施する「集団討論・個人面接や小論文または作文など」への対策の難しさに加え、「倍率の高さ」が挙げられます。

推薦入試は募集人員が少ないため、人気のある学校の倍率は極めて高くなりがちです。例えば、進学指導重点校(普通科)の2022年推薦入試では、男子2.22~5.93倍、女子3.13~9.62倍の高倍率でした。一般入試では男子1.05~1.94倍、女子1.33~2.13倍であり、相当な開きがあります。これらの学校に関して言えば、調査書点(内申)が満点であっても不合格となる可能性が十分にある、厳しい入試なのです。

Q.都立高校の入試では、中学校の教科書レベルを超えた出題はされないと聞いたことがありますが、それでも塾に通う必要はありますか。

A.都立高校の入試問題は、要求される「知識」の面では確かに学校の教科書がベースとなっています。ただし、教科書=入試問題ではないことに注意が必要です。例えば、学校の国語の教科書に掲載されている文章は、それが小説や論説のどちらであっても、入試問題のようにあらかじめ傍線が引かれていたり、答えるべき問いが付けられていたりはしません。問題そのものを解く訓練抜きには、学力検査で高い得点を取る実力はなかなか身に付かないのです。

また、「問題の難度」の面から見ても、教科書に掲載されている問題と、実際の入試問題との間には大きな差があります。特に、進学指導重点校の自校作成問題に関しては、求められる知識の量こそ教科書レベルですが、問題の難度は教科書とは異なり、このギャップを埋めるためには特別な対策が必要です。

Q.進学指導重点校の入試は難しいですか。

A.難度は高いといえます。とりわけ日比谷高は、私立の最難関である開成高や、国立の最難関である筑駒高に合格した生徒でも、最終的な進学先を日比谷高にする受験生がいるくらいの人気と難度です。したがって、そうした最難関校を目指すレベルのライバルとの競争であるという認識のもと、日々の学習に取り組む必要があります。

Q.共通問題である理科・社会にはそれほど注意を払わなくても大丈夫でしょうか。

A.確かに、理科・社会に関してはすべての都立高校で共通問題が使用されています。ただし、例えば日比谷・西高といった最難関校では、理科・社会の目標点数は9割で、極めて高得点での勝負となります。たった一つのミスが合否に影響しかねないため、油断できません。

ちなみに、先ほどの日比谷・西高の例でいえば、理科・社会で点数を大きく落とした場合には、難度の高い自校作成問題の英語・数学・国語でその失点をカバーしなければなりません。また、理科・社会はすべての受験生が高い点数を取るため、これらの科目で他科目の失点をカバーすることが難しいという面もあります。

Q.学年や時期に応じて、どういった勉強をしていけば良いでしょうか。

A.都立高校入試においては、まずは学校の教科書の内容をしっかりと押さえることが大切です。それとは別に「問題を解く方法論」を身に付ける必要があるため、教科書の内容だけで入試問題で高得点を取ることは難しいのですが、それでも根本であることは間違いありません。

特に中1・2生の時点では、学校で習う内容をしっかりと身に付けることが重要です。定期テストの準備はもちろんのこと、中3生の時点で高い内申を取れるよう、学校の授業をきちんと聞いて、提出課題にもしっかりと取り組む習慣を身に付けておきましょう。

そして、これらと並行して、塾でハイレベルな問題に対応する方法論を身に付けておけば、中3生になったときに過去問演習にスムーズに入ることができます。

都立日比谷高・西高・都立難関校を目指す方へ

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  • 中3生は志望校別クラス、中2生は教科別講座なので、目的に合ったクラスで効果的に学習できます。
  • 1回完結型のオリジナルテキストを使用した授業は、復習や総まとめにも最適です。
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  • 日曜日の授業なので、平日は学校が忙しい方も受講しやすく、休日に勉強する習慣を確立でき、効率的に実力を伸ばすことができます。

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