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【2023年高校入試分析】東京都立校・難関国私立校

入試分析

難関附属校の状況

コロナ禍では追試験を設けたり、面接を中止したりする学校が現れました。一昨年度の入試はコロナ禍の影響を受け、受験校を絞ったり、遠方の受験を回避したりする受験生が増えたことで、多くの学校で志願者数の減少が顕著でしたが、昨年には志願者数は平年並みに戻りました。

今年度の入試は慶應義塾高の面接が復活するなど、コロナ禍の影響緩和がさらに進みました。また、近年は大学入試改革の影響もあり、附属校人気といわれていますが、進学校が不人気になったわけではありません。実績のある進学校が志願者数を増やすなど、人気の二極化が進んでいます。

男子・早慶高

他の早慶高と入試日が重ならない早大本庄学院は多くの志願者を集めています。2020年に2次試験(面接)を廃止すると志願者数が増加。一昨年はコロナ禍で減少したものの、昨年は揺り戻し、今年はさらに増えました。

慶應義塾高は志願者数が安定しています。同校と入試日が重なる早実高は、他の早慶高と比べて募集定員が元々少ないですが、昨年はさらに減少。そのため、昨年は志願者数も減りましたが、今年は微増しました。

早大学院は早慶高の中で志願者数が最多の学校であるだけに、一昨年度はコロナ禍による志願者数の減少も顕著でしたが、昨年度入試から平年並みの志願者数に戻っています。慶應志木高は慶應義塾高と同程度の志願者数ですが、募集定員が慶應義塾高より少ないために倍率が高くなることや、開成高などの進学校と併願する受験生が多く、志願者のレベルが高いことから、男子・早慶高の最難関といえます。

女子・早慶高

女子は男子と比較すると、いずれの学校もコロナ禍における志願者数の減少は緩やかで、受験できる学校の数が男子より少ないこともあり、コロナ禍においても受験校を絞る受験生が少なかったと推測されます。慶應女子高の志願者数は安定。早実高の志願者数は募集定員が減少した昨年も減らず、5倍近い倍率で非常に厳しい入試となったため、今年はそれが敬遠されてやや減りました。

MARCH附属校

今年は青山学院高の入試日が例年の2月12日から11日に変更されました。それに伴い、11日が入試日の学校は受験者が分散し、中大高などは志願者数が減少しました。逆に、12日が入試日の学校には志願者が集中。その影響が特に顕著だった明大明治高は、男女とも昨年より倍率が上昇しました。

難関進学校と都立校の状況

男子・私立進学校(1月入試)

5科入試の渋谷幕張高と市川高は、開成高や国立大附属校といった難関進学校の併願先として定着していますが、出題傾向は異なっています。市川高は都県立校との併願を意識した、難度は高いものの、努力してきた受験生が報われるような素直な問題です。渋谷幕張高は平均点が低く、特に理科・社会は高難度です。

男子・私立進学校(2月入試)

開成高の志願者数は安定。新校舎が完成したこともあり、人気に拍車がかかっています。巣鴨高は一昨年より入試日を、開成高と重なる2月10日から12日に変更しました。5科入試を導入したこともあって、開成高や国立大附属高との併願者が増えて人気が上昇しています。同校は募集定員の約2割を3科の得点で判断しますが、今年は早慶高の合格者でも、同校の3科入試では不合格というケースがありました。

男子・国立大附属校

筑駒高は例年、140名ほど受験し、定員40名に対して合格者が45~46名という少数精鋭の戦いになります。筑波大附高の合格者数は筑駒高の2倍程度ですが、志願者数も多いため高倍率です。学芸大附高(一般)は都県立校を狙いつつ、国立大附属校にもチャレンジする層が多く受験します。そのため、都県立校の合格発表の後、補欠からの繰り上げ合格が例年多く出ます。それによりチャレンジしやすいイメージが浸透したのか、志願者数が増加傾向にあります。

女子・私立進学校(1月入試)

市川高と渋谷幕張高は男子よりも志願者数の増加が顕著です。その背景には、豊島岡女子高が高校からの募集を停止したことによって、難関進学校の選択肢が減ったことがあります。渋谷幕張高は、女子が受験する高校の中では理科・社会が最も難しい学校で、理科・社会に至るまで相当深く勉強することが求められることもあり、女子の中では最難関に位置する学校といえます。

女子・国立大附属校

筑波大附高は募集定員が少なく合格者も絞られるため、国立大附属校の中でも最難関の位置付けです。一方、お茶の水女子大附高や学芸大附高は理科・社会の入試問題が比較的取り組みやすいこともあり、慶應女子高や都県立校を第一志望とする受験生から比較的挑戦しやすい学校と認識されているようです。近年はお茶の水女子大附高が志願者数を伸ばしていましたが、今年度は、倍率の高いお茶の水女子大附高を敬遠して学芸大附高を受けた受験生が一部いたようです。

都立日比谷高・西高

都立校入試の今年のトピックは、男女別定員の緩和措置とスピーキングテストの導入です。全日制普通科の都立校(単位制、コース制を除く)の全校で、男女合同で選抜する枠が昨年10%設けられたのに続き、今年はそれが20%に拡大されました。来年以降早期に、男女合同定員に完全移行する予定です。そんな男女別定員の緩和措置の影響からか、西高の昨年の合格者は女子が増えて男子が減りましたが、今年は緩和措置が実施される以前の水準に戻りました。

一方、日比谷高の昨年の合格者数は男子が増加し、女子が減少。今年は男女合同で選抜する枠がさらに広がったにもかかわらず、男女とも昨年と同水準の合格者数を保ったので、男女とも高いレベルで拮抗していると考えられます。

2023年入試まとめ

コロナ禍の影響はかなり緩和されたため、今年見られた傾向は来年以降に一層顕著になるでしょう。大学入試改革を受け、進学校は人気の二極化がますます進みました。進学校と附属校のどちらを目指すかを決める上で考えなければならないポイントは次の2点です。①どちらを選ぶにせよ、大学の学部選びは早めに始めること。②高校入試に全力で取り組む中で、自分が大学入試に適性があるかを見極めること。そのためにも、まずは目の前の勉強に全力で取り組みましよう。

入試問題の傾向

英語

長文読解はエッセイや説明文が増加傾向にあり、物語文に比べて語彙も内容もレベルが高くなっています。筑駒高や早大学院では今年も物語文が出ましたが、以前より高難度です。また、日常的な英語表現が問われる出題や、さまざまな文法事項や語彙の高度な運用能力が問われる出題も、近年は目立ちます。

対処法は日ごろからレベルの高い英文に触れ、文脈を推し量る力を身に付けて語彙を増やし、高度な文法事項や自然な英語表現を駆使できるようにしておくことです。

数学

今年は情報を正確に把握し、丁寧に処理させる問題が多く見られました。具体的には①図が与えられず自分で描いて答えを出す問題、②文字式のまま処理する問題、③データの活用に関する問題です。

都立進学指導重点校は難度が上昇傾向で、複雑な計算を伴う問題や、典型的ではない作図や証明の問題が出ています。こうした問題に対応するには、答えを出すだけで満足せず、その根拠まで考える学習が大切です。

国語

今年のトピックは①標準問題中心の設問構成、②複数の文章を組み合わせた出題、③時事的な話題に関する文章の3点です。①の傾向は近年続いていて、受験者の努力や実力が得点にしっかり結び付くようになりました。②は一つの大問の中に、例えばエッセイと古文など二つの種類の異なる文章があり、両者をまたいで小問が出題されるような形式です。こうした問題は大学入学共通テストの影響と考えられ、今後も増える可能性があります。

国語の学習で大切なのは解法を確立すること。まず文章の内容を理解して設問の意図を把握し、それに沿って解答をイメージするという流れは、どんな問題にも共通します。

理科

理科の入試問題は学校により、「知識と分析力重視型」「知識と計算力重視型」の2タイプがあります。国立大附属校4校は前者で、主に教科書からの出題ですが、教科書内でもコラムにあるような知識も出されます。4校のうち学芸大附高とお茶の水女子大附高は計算力を重視する問題が多い傾向でしたが、近年は分析力重視の問題へのシフトが見られました。一方、「知識と計算力重視型」は主に難関私立進学校です。中でも渋谷幕張高は分析・思考と計算の割合が高く、初見のテーマの問題など、非常に高難度の出題があります。

都立校は共通問題のため、解きやすい印象ですが、近年は得点しづらい完答形式の問題や記述問題も出されています。日比谷高や西高は9割得点することが目標ですが、都立高の出題は問題文が長く、読解が必要なものが多いため、丸暗記に頼らない理解重視の学習が必要です。

学習法としては、土台となる知識は一問一答形式の問題集などで早めに完成させること。思考力、分析力、精度は授業とテキストの演習などで鍛えましょう。

社会

難度は今年も筑駒高と渋谷幕張高が飛び抜けていました。都立校は共通問題のため、進学指導重点校では8~9割の得点が目標となりますが、学習指導要領の改訂で問題が難化しています。

今年の私立難関校は語句記述問題の語句のレベルが高く、渋谷幕張高では教科書外の語句を記述する問題が出て、開成高では教科書内でも地図内や写真の説明文にある語句が求められました。また、文章記述問題では長所と短所など二つの観点を述べる問題が目立ちました。

知識の単なる定着だけでなく、知識の柔軟な活用も問われるのが近年の傾向です。語句はその背景も含めて説明できるように理解することが大切です。

  • この記事は2023年3月12日()に実施したイベント「高校入試分析会 2023」のダイジェストです。