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東京学芸大学附属高等学校(一般) 2023年出題傾向リサーチ

出題傾向リサーチ

英語

1 リスニング問題:小問数5

英文の放送を聞き、質問の答えとして最も適切なものを選ぶ問題です。例年は英文の放送に続けて質問が流れ、それが2回繰り返されていましたが、2023年は英文の放送が1回のみになり、質問は問題用紙に印刷されていました。何を聞き取るべきか分かりやすくなりましたが、放送は1回のため集中して聞き取る必要があります。

2 物語文の読解(約900語):小問数9

ある家族で飼われていた子猫が突如いなくなってしまい、再び見つかるまでの物語文です。問3では、子猫がいると思われる場所を本文から読み取ることが求められました。問6では、2021年に出題された、「本文の内容に合わない誤りがある1文」を選ぶものでした。2021年より選択肢が一つ少なく、内容も把握しやすい場面だったので、解きやすかったと思われます。

3 説明文の読解(約760語):小問数12

17世紀中ごろから18世紀にかけて見られた、イギリスの「グランド・ツアー」に関する説明文です。人物名や地名、芸術作品名などが多く登場しています。時間軸や状況に注意しながら読み解く必要があり、本文中に登場する人物を表にあてはめる選択式問題もありました。長文は3題出されましたが、そのなかで最も時間を要した大問だと思われます。本文を読む前に設問に目を通しておくことで、時間をかけずに解答できます。

4 説明文の読解(約680語):小問数12

生活様式におけるミニマリズムに関する説明文です。問4の並べかえ英作文は、関係代名詞が省略されていて、解くのに少し時間を要するものでした。問6は与えられた語句に4語を補い、流れに合う表現を完成させるものでした。2021年と同様に、2023年も補う語数が指定されていて、解きやすかったと思われます。

数学

1 小問集合

(1)平方根の計算、(2)2次方程式、(3)円と角度、(4)確率でした。どれも基本的な問題であり、短時間で完答したい大問でした。

2 空間図形

正八面体の辺上の点を結んでできる三角形についての問題でした。(1)(2)は正八面体についての基本的な理解があれば容易です。(3)(4)は平面の抜き出し方がポイントで、適切な三角形に注目できたかどうかで差がついたと思われます。

3 座標平面上の動点

座標平面上の3つの動点を結んだときにできる直線や三角形について考察する問題でした。(1)(2)は確実に正解したい問題です。(3)は解法によっては計算量が多くなるため、試験時間内に正解できた受験生は少なかったかもしれません。

4 平面図形

直角二等辺三角形を手順にしたがって折ったときの、折り目が作る角度についての問題でした。ここ4年間、会話文や穴埋め形式の証明など、誘導に沿って解き進める問題が出されています。2023年は穴埋め形式の問題で、(1)(2)は基本的な内容でした。(3)は問題文の意図を正確に読み取る必要があり、難しく感じた受験生もいたことでしょう。

5 整数と規則性

自然数をある規則にしたがって正方形状に並べる問題でした。並べ方はよくある設定なので、類題に触れたことがあれば解きやすかったと思われます。(2)は考察にあたってはまず手を動かして色々な場合について試してみる必要がありました。

国語

1 菊池暁『民俗学入門』

鉄道の開通が世界にもたらした影響を民俗学者の視点から論じた文章からの出題でした。例年通り設問の大半を記号選択が占めています。選択肢の中にはまぎらわしいものも含まれていましたが、文中から解答の中核となる要素やキーワードを探しだせば明確な根拠を持って対応できるものが多く、総じて標準的な難度だったと言えます。できるだけ失点を避けながら処理したい大問でした。知識分野からは漢字が5問出されています。

2 乗代雄介の文章

共に愛書家である叔母と姪との関係を姪の側から描いた小説文からの出題でした。読解に関する設問は傍線部の理由を問うものが中心で、複雑な時系列のなかでの主人公の心情の移り変わりを明確な根拠を持っておさえる必要がありました。設問は文章表現に関するもののほか、例年通り語句の意味を問うものが出されています。言葉の本来の意味を正確に把握したうえで文脈にも注意しながら答える必要がありました。また、文法事項として品詞の識別も出されています。

3 『一休ばなし』

とんち話で有名な禅僧である一休宗純の逸話を集めた仮名草子からの出題でした。多くの受験生になじみのない言葉遊びが主題になっているため、文章の展開を理解するのに時間がかかったと思われます。設問はすべて記号選択でした。古文単語の意味に関する設問が例年通り出されていますが、文脈を理解していないと答えづらいものでした。注釈をしっかりと確認したうえで慎重に読解することが求められた大問であったため、点差が大きくついたと考えられます。

理科

1 地震、火山、天体(地学)

前半は地震と火山に関する知識を確認する内容で、後半は惑星の見え方について理解度を測る内容でした。この大問での失点は最小限にしたいところです。

2 化学変化、物質の特徴(化学)

化学変化に関する総合問題でした。知識問題は基礎的な内容で、計算問題は標準的な難度でした。難関校では頻出の観点で、類題の演習経験によって差がついたと考えられます。

3 動物、顕微鏡、生殖(生物)

前半はイカの解剖をテーマとした問題、後半は遺伝と進化に関する問題でした。前半はやや細かな知識が問われました。後半は典型問題が中心で、取りこぼしは最小限に抑えたいところです。

4 電流(物理)

手回し発電機を用いた実験の問題で、標準レベルの内容でした。複数解答が求められる設問もあり、思考力が求められました。

5 天気(地学)

天気に関する総合的な理解度を測る問題でした。一部細かな知識問題が含まれていましたが、それ以外は典型的なもので、対応はしやすかったと思われます。

6 化学変化(化学)

炭酸カルシウムが関係する化学変化をテーマとした大問でした。問題文を丁寧に読み解くことができれば、全問正解も狙える大問でした。

7 植物、遺伝(生物)

前半は植物の蒸散に関する問題、後半は遺伝の問題でした。典型的な問題が中心ですが、条件を読み落としやすいつくりでした。

8 運動とエネルギー、力(物理)

物体の運動に関する標準レベルの問題です。問題文と図の条件を見落とすことなく、丁寧に解き進める必要がありました。

社会

1 政治

人権保障を題材とした出題でした。3つの文章の正誤をすべて判断する形式は近年頻繁に出題されています。消去法で解答を導くことができないため、正確な知識が必要とされる難度が高いものでした。

2 世界地理・経済

エネルギー消費や環境を題材とした出題でした。いくつかのグラフが用いられていましたが、どれも基本的な知識で解答できたので、確実に得点したい大問でした。

3 日本史

古代から現代までの日中関係を題材とした出題でした。教科書に掲載されている基本的な知識を問うものがほとんどでした。史料を用いた問題は多くの受験生が初めて見る史料でしたが、落ち着いて読み取れば対応できるものでした。

4 歴史総合

古代から現代までの世界の一体化を題材とした出題でした。地図や表を用いた問題は出題の意図をくみ取る必要があり、十分な問題演習を積積んできたかどうかが試されたものの、全体的な難度や求められる知識量は大問3の日本史分野と同程度でした。

5 世界地理・経済

日本と世界各国の関わりを題材とした出題でした。気候や時差・貿易などほかの高校でもよく問われる単元からの出題が多く、難度も標準的でした。

6 日本地理

九州地方を題材とした出題でした。扱われているテーマは特別なものではなかったものの、さまざまな統計が用いられ、正確な読み取りと分析が必要であることから難度はやや高めでした。