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【2022年高校入試分析】難関国私立高校・東京都立高校

入試分析

難関附属校の状況

昨年はコロナ禍の影響でチャレンジ受験や遠方での受験を断念する受験生も多かったため、多くの学校で志願者が減少しましたが、今年は揺り戻しが見られ、志願者数が増加しました。特に、早慶高やMARCHといった大学附属校は、大学入試改革への対策上の不安や私立高校実質無償化などの理由で人気が高まっています。また、進学校では人気が二極化。都立進学指導重点校などの難関校は人気が継続する一方、中堅校は私立大附属校の人気に押され気味です。

今年の入試の主な変更点としては、豊島岡女子が高校募集を停止したこと、早実高が募集人員を減らしたこと、都立校の男女別定員の緩和措置が挙げられます。

男子・早慶高

他の早慶高と入試日が重ならない早大本庄学院は、2020年に二次試験(面接)を廃止して以降、志願者数がさらに増加。昨年はコロナ禍の影響で減少したものの、今年はその反動で増加しました。早実高は募集人員を減らしたのに伴って志願者数も減少しましたが、倍率は昨年の2.5倍から3.4倍に上がり、激戦となりました。

慶應義塾高は二次試験の面接の中止を直前に発表しました。志願者数は、昨年の減少からの戻りや、入試日が重なる早実高の受験者数減少の影響で、50人ほど増加しました。

慶應志木高と早大学院の志願者数は昨年減少しましたが、今年、早大学院の志願者数は、大きく揺り戻しました。慶應志木高は早大学院の入試日(2/11)と重なる二次試験(面接)を予定通り実施。さらに、同校の一次試験(2/7)は開成高や国立大附属校を受験する上位層の前哨戦となるため、非常にハイレベルです。同校の二次試験(面接)を受けた受験生は早大学院の入試を受けられないので、SAPIX偏差値が早大学院を5ポイントほど上回ります。

女子・早慶高

入試日が重なる慶應女子高と早実高の志願者数は、コロナ禍の影響を受けた昨年もあまり減少しませんでした。また、慶應女子高は最難関校であるため、例年、志願者数に大きな変化がないのが特徴です。一方、早大本庄学院は昨年の減少からの揺り戻しが顕著でした。

MARCH附属校

MARCH附属校の志願者数も、昨年は多くの学校で減少した分、今年は一昨年と同等程度に戻り、早慶高同様、人気の高止まりが続いています。中でも中大附高の男子の志願者数は、入試日が重なる早実高の募集人員減の影響で増加。さらに、豊島岡女子の高校募集停止の影響で、同校と入試日が重なっていた中大高の女子の志願者数も増えました。

難関進学校と都立校の状況

男子・私立進学校(1月入試)

渋谷幕張高と市川高の志願者数は、コロナ禍の影響で遠方の受験を回避した層が戻ったため、昨年の減少から回復しました。両校は5科目入試のため、開成高や国立大附属校、都立日比谷高への進学を考える受験者の併願先として想定されます。特に渋谷幕張高は、そうした進学校を志望するトップ層の戦いとなり、非常にハイレベルです。

男子・私立進学校(2月入試)

開成高は志願者数や難度に大きな変化はありませんが、今年は志願者数が過去5年で最多となりました。巣鴨高は昨年から、入試日を開成高と重なる2月10日から12日に変更。5科目での入試を導入したこととも相まって人気が上昇しました。

女子・私立進学校(1月入試)

市川高と渋谷幕張高はともに、昨年も志願者数は減少せず、今年はさらに増加しました。その理由としては、豊島岡女子の高校募集停止によって難関進学校の選択肢が狭まったため、進学校を志望する生徒が集中していることが挙げられます。特に渋谷幕張高は、男子と同様に国立大附属校や都立トップ校を志望する受験者の併願先として想定され、非常に高レベルです。

男子・国立大附属校

筑駒高、筑波大附高、学芸大附高(一般)の3校は入試日が重なるため、いずれか1校しか受験できません。最難関の筑駒高はトップレベルの戦いになるため、例年志願者数に大きな変動はありません。筑波大附高は国立の共学校では最難関で、昨年減少した志願者数に今年は揺り戻しがありました。一方、学芸大附高は、補欠からの繰り上げ合格が例年多く出るため、合格しやすいイメージが浸透してきたのか、志願者数は大幅に増加しました。

女子・国立大附属校

学芸大附高、筑波大附高、お茶の水女子大附高の3校はいずれも難関です。今年は豊島岡女子の高校募集停止のためか、お茶の水女子大附高の志願者数の増加が特に顕著でした。

都立日比谷高・西高

日比谷高は例年、男子の受験者のレベルが非常に高く、男女別定員の緩和措置の影響によってか、志願者数は男子が増加し、女子は減少しました。合格者数も昨年に比べ、男子が7名増、女子が8名減と、同様の影響が出ています。一方、西高の合格者数は昨年に比べ、男子が11名減、女子が9名増と、男女別定員の緩和措置の影響が日比谷高とは逆の形で出ました。

2022年入試まとめ

2021年の東大合格者実績(現役)を見ると、日比谷高や横浜翠嵐高といった都県立のトップ校が非常に伸びていて、開成高や国立大附属校と並んで人気となっています。そのため、進学校では以上のような難関校に人気が集中する二極化の傾向が続くと予想され、私立大附属校は大学受験の回避を目的に人気が高止まりしています。また、志願者数は全体として昨年の減少から立ち直った今年と同水準になることが予想されます。

入試問題の傾向

英語

近年では時代の変化に合わせて、知識だけでなく、柔軟に考える力が求められる傾向にあります。まず一つは時事的な語句が使用されるようになりました。次に、新学習指導要領の導入。以前は高校での学習範囲とされてきた文のうち、中学校の学習範囲になったものがあります。例えば筑波大附高で、これまで出されなかった仮定法などが出題されるなど、新学習指導要領の内容が早速入試問題に反映されています。最後に、アウトプットの目的の変化。理解したことをかみ砕き、自らの言葉で伝える力が求められるようになりました。

また、難関校の長文読解はボリュームが多く、総語数が1000語以上の学校がほとんど。一語一語を丁寧に処理するより、話の流れやキーワードになる語句を見ながら、内容重視で読み進める力が求められています。

合格するためには長文読解に重点的に取り組み、文法・語彙を習得することはもちろん、自分の言葉で書けるようにしておくことが大切です。さらに、日頃からニュースを見るなどして、英語だけでなく複合的な力や知識を身に付けておくと、入試問題の理解を助けてくれます。

数学

今年は全般的に昨年より難度が上がりました。その理由として、「考える学習」をしてきたかを問う出題が増加したことが挙げられます。どの解法を使えばよいのか分かりにくい問題、作題者の意図を考える必要のある問題、見たことはあっても本質まで理解していないと対応できない問題が多く見られたことは、思考力・表現力の育成を目標に掲げた大学入試改革が影響していると考えられます。

今後の学習のポイントは、解法で疑問に思ったことなどを後回しにせず、徹底的に考える姿勢を持つこと。解けた問題についても、解法を覚えるだけなどの表面的な学習で終わらない態度で臨みましょう。

国語

現在の高校入試における国語の出題は、知識と読解力が必要となる標準問題が中心になっています。加えて難関校では、記述力とスピードが求められます。さらに、複数の文章を組み合わせた出題をする学校が増えつつあり、今後もその傾向が続きそうです。また、今年は全体的に、コロナ禍やAIといった時事的話題の文章は少なめでした。これからの学習のポイントは、まず文章を読む土台となる語彙を増やすこと。古文が出題される学校はその対策も不可欠です。文章の要点を捉える訓練を重ね、要約を学習に加えると効果的です。

理科

5科目入試の進学校の中で、渋谷幕張高、開成高、筑駒高は計算を含む思考力・分析力を重視し、お茶の水女子大附高と学芸大附高は知識を重視した出題が多く見られ、筑波大附高にはその中間的な傾向があります。思考力・分析力を重視する問題でよく見られるのは、受験生が初めて接するような題材を取り上げたものです。さらに、知識問題では知識の量と精度が求められます。

一方、都立校の理科は共通問題のため、基礎・標準レベルの出題が中心です。今年の都立校の問題で特徴的だったのは、完答形式の問題や計算問題が減り、文章記述の出題がなく、得点がしやすくなったこと。一方で、きちんと理解していないと間違える問題もあり高得点勝負になることから、高い精度が求められます。

今後の学習法としては、仕組みまで理解した上で知識を身に付け、その知識を土台とした思考力・分析力を磨くこと。基本的な知識は、中3の夏前までに一問一答形式の問題集で完成させましょう。

社会

今年も例年通り、難度は筑駒高と渋谷幕張高が飛び抜けていました。開成高、筑波大附高、学芸大附高、お茶の水女子大附高は基礎から応用レベルの知識を幅広く問う傾向にあり、出題数も多いのでスピードも求められます。一方、都立校は共通問題のため、基礎・標準レベルですが、進学指導重点校では8~9割の得点が目標となり、高得点勝負です。

学習指導要領の改訂に伴い、教科書がより深い内容に改められました。今後は教科書を隅々まで精読して知識レベルを上げ、多様な出題形式に対応できるよう演習を重ねましょう。読解力・記述力の向上に努めることも忘れてはいけません。

  • この記事は2022年3月18日~5月9日にかけて動画配信された「高校入試分析会 2022」のダイジェストです。