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慶應義塾高等学校 2023年出題傾向リサーチ

出題傾向リサーチ

英語

 空所補充選択:小問数10

例年は同意文完成が出題されていましたが、2023年はメール文面中の空所に当てはまる語句を選択する形式になりました。文章自体の難度は高くありませんが、似通った選択肢から文法・語法上正しいものを選択しなければならず、知識の正確さが求められました。

 誤文訂正:小問数10

各文の4つの下線部から間違っているものを選び、下線部全体を正しい形に直す問題でした。品詞や句と節の違いなどがポイントでした。また、直すべきポイントが複数含まれる問題もあり、大問1で求められた正確さに加えて、慎重さが必要でした。

 説明文の読解(約170語):小問数11

近年話題のプラスチックごみについての説明文でした。本文中の空所に適語を考えて補う形式は慶應義塾高では頻出ですが、すべての空所に「頭文字」または「最後の文字」が指定されたのは初めてでした。読解演習を積み重ね、素早く展開を予測する力を身につけられているかどうかが試されています。

 物語文の読解(約1410語):小問数20

主人公が高校時代の恩師とのエピソードを回想する物語文でした。中盤に登場する英語の詩は、受験生にとって大きな壁に感じられたと思われます。本文にも見慣れない語句が数多く登場するため、2022年から続く注釈も英語で与えられる形式に慣れていなければ、素早く読解できなかったと思われます。本文の内容に関する記号選択、下線部和訳は慶應義塾高で継続的に出題されてきたものです。また、2022年からの新形式である、登場人物の心情や行動について、英語で説明する問題が2023年は5問出されました。語数の指定があり、合計90~100語程度の記述が求められています。また最後の問には「自分自身の考えを書く」という指示があり、これまでなかった種類の英作文の出題に戸惑った受験生もいたと思われます。

数学

1 小問集合

(1)余りの問題、(2)工夫する計算、(3)平方根の計算、(4)正多角形の角度、(5)一次関数の変域、(6)連立方程式、(7)平面図形の7問でした。手間のかかる問題が多く、丁寧な処理が求められました。

2 確率

3回カードを引き、そのカードに書かれている数字の積について考える問題でした。丁寧な場合分けが必要なため、決して容易ではありませんが、あとの大問の難度を考えると、得点を重ねておきたい問題でした。

3 約数

約数の個数に関する問題でした。典型問題であり、類題を解いたことがある受験生も多かったと思います。ほかの大問と比べると取り組みやすいため、時間をかけずに処理したいところです。

4 食塩水の文章題

2つの食塩水から異なる量の食塩水を取り出して交換する問題でした。典型的で解法に悩むことはなかったと思われますが、立式後の計算が煩雑なため、解ききることは容易ではなかったでしょう。

5 二次関数

座標平面上の放物線と正三角形、正六角形についての問題でした。手を動かして計算をしていく過程で、正しい図が把握できたかどうかがポイントでした。

6 回転体

空間内で、(1)は三角形を、(2)は円を回転させてできる立体についての問題でした。(1)は基本問題ですので、確実に得点したいところです。(2)はできる立体の概形を把握することが難しく、自信をもって答えられた受験生は多くなかったでしょう。

国語

1 司馬遼太郎『峠』

戊辰戦争で新政府軍と戦った河井継之助を描いた小説文の、作者によるあとがきからの出題でした。継之助に代表される幕末の武士の死生観について、戦国期や明治以降の日本人と対比して述べられています。やや難しい言葉が含まれるものの、論旨は明快で、読みにくさはありません。設問は、記述・抜き出しが中心でした。記述は制限字数30字以内が2問で、例年よりも分量は少なめでしたが、書くべき内容の判断が難しく、差がついたものと思われます。抜き出しの4問は、設問につけられた指示に着目すれば、比較的解答しやすいものでした。また、漢字の書き取り5問に加え、旧国名や文学史に関する問題が出されました。文学史はやや細かい知識が求められる難問でした。慶應義塾高では、例年多くの漢字や知識が問われるので、しっかりと対策しておくことが必要です。

2 斎賀秀夫『悪文 伝わる文章の作法』

日本語の対話や文章における、常体と敬体の使い分けや混用について説明した文章からの出題でした。やや長い文章ですが、具体例が多く挙げられているので、読み取りは難しくありません。設問は記述・抜き出し・空欄補充が中心でした。設問数は多いものの、文章内容を丁寧に確認していけば着実に解答できるものが多く、高得点を狙いたい大問でした。知識分野では、漢字の書き取り5問のほか、語句の意味・文学史・仮名遣いの問題が出されました。現代仮名遣いを歴史的仮名遣いに直す問題といった目新しい形式もありましたが、総じて標準的な難度でした。2題を通して、時間には余裕があるため、読解問題は時間をかけて十分に吟味することが大切です。