難関国公私立高校の2026年入試を振り返って
教科長座談会
2026年の高校入試の総括として、SAPIX中学部の各教科の教科長が一堂に会し、入試の動向を語り合う座談会を開催しました。対象は、最難関私立高から早慶高、国立大附属高、MARCH高、都立の進学指導重点校まで多岐にわたります。最新の出題傾向や合否を分けた要因は何だったのかなど、来年以降の受験生が合格を勝ち取るための一助としてその概要をお届けします。
※この座談会は2026年2月25日(水)に開催されました。
(左から)英語科教科長・磯金 俊一、教務部長/「高校への数学」執筆者・青木 茂樹、数学科教科長・髙橋 佳太、国語科教科長・渡邊 侑介、理科教科長・大森 惇平、社会科教科長・瀧島 一裕
2026年の難関校入試の全体を総括 現代的な題材と深い内容理解を問う傾向が
教務部長/「高校への数学」執筆者・青木 茂樹
青木 2026年の主要校の入試が一段落しました。まずは教科長の皆さんに、今年の入試全体の印象や目立った傾向について伺います。英語はいかがでしたか。
磯金 文法の出題で大きな変化はありませんでしたが、長文の題材はAIの活用やSNSへの画像投稿など、時代を反映した現代的なトピックが目立ちました。特筆すべきは、これまでも多かった「内容一致問題」の割合がさらに増えたことです。単なる文法知識だけでなく、内容を深く理解して解くことが求められる傾向が進んでいます。
髙橋 数学は近年、進学校を中心に、誘導形式の問題が増えています。小問を増やしたり、穴埋めや会話文を通じたりして、一つのテーマをゴールまで導く形式です。今年も同様の出題が多く、今後もこの流れは続くと見ています。
渡邊 国語はおおむね例年通りですが、題材が変化しています。一時期多かったコロナやAIといった旬の話題が一巡し、昔ながらのテーマに回帰してきた印象です。フロー的な話題からストック的で本質的なテーマでの出題が増えています。
大森 理科は、開成高や筑駒高で「実験ミス」や「理論値とのズレ」といったリアルな実験現場の状況を扱った問題が出ました。筑駒高では過去にも出されているので、今後も注意が必要です。ただし、まだ他校への波及が見られるほどではありません。
瀧島 社会は筑駒高・渋谷幕張高を除いては、難問の出題が減り、取り組みやすくなった一方で、知識の精度を試す出題が目立ちました。市川高では「難民」の定義を、開成高では「持続可能な開発」の意味を説明するものが出題されるなど、用語を説明する形式があらゆる学校で出題されました。
開成高・筑駒高
筑駒高の数学は解ける問題の見極めが重要
開成高では国語で自己見解を問う記述を出題
英語科教科長・磯金 俊一座右の銘「真実は細部に宿る」
青木 では、最難関の開成高・筑駒高から振り返っていきましょう。英語はどうでしたか。
磯金 開成高は初見では解きやすそうでしたが、合格者平均点は60.2点で、難化した昨年から横ばいでした。語彙・文法が難しかった昨年に対し、今年は国立大附属高に近い分析・思考を求める出題へと質が進化してきています。
青木 筑駒高はいかがでしたか。
磯金 20年近く形式が変わっていませんが、相変わらず高難度です。物語文が二転三転も展開したり、「イラストを見て記述する」タイプの問題が2年連続で出されたりと、高い知性が求められます。
青木 数学は開成高で出題形式が変わりましたね。
髙橋 大問が4題から3題に減りました。これは2005年以来です。その一方、小問数は直近5年で最多でした。解ける問題を見極める形式から、小問をたどり、一つの問題を時間をかけて解く方向にシフトしました。また、答えのみを記す形式が増え、記述で部分点を狙う戦略が困難になっています。難度はさほど高くなく、平均点は昨年とほぼ同じでしたが、合格者平均点と受験者平均点の差が激しく、ここ10年で最も差がついた年になりました。
青木 15.4点の差がついていますね。15点以上の差は2013年以来、13年ぶりです。筑駒高はどうでしょうか。
髙橋 例年通り、45分という短時間で解ける問題を見極め、確実に正解を積み上げていくことが鍵となりました。
青木 国語はどうですか。開成高で珍しい出題があったと聞きました。
渡邊 二つ目の大問が随筆文で、「あなたの考えを述べよ」という自己見解を問う記述が出ました。都立高には見られますが、近年の難関私立高では非常に珍しいケースです。筑駒高は、ここ数年の「高校受験のレベルを超えるような超難問」からは少し落ち着きましたが、その分、国語という教科に真剣に向き合ってきたかどうかで顕著な差が現れる試験となりました。
英語 2026年 出題トピック
- 開成高:リスニングの一つに、鳥の生態に関する高度な内容が出題
- 筑駒高:温泉とレストランのピクトグラムの新旧デザインを比較し、変わったポイントや理由を説明させる問題が登場。イラストについて記述する問題が出たのは2年連続
開成高は理科・社会ともに高得点勝負に
筑駒高の理科は計算力と情報処理能力が必須
理科教科長・大森 惇平座右の銘「個を尊び、善を信じる」
青木 理科と社会についてもお願いします。
大森 開成高の理科は合格者平均点が50点満点中40点を超え、2019年以来の高得点勝負となりました。ただし、基礎から中難度の問題が中心で、ミスを最小限に抑えることが求められました。例年は「傾向がないのが傾向」である開成高は、物理・化学・生物の分野で2年連続して類似問題が見られた他、思考力重視の出題が目立ちました。筑駒高は化学分野で計算量と情報処理能力が求められました。日頃から「この解法には再現性があるか」などと意識して学習することが大切です。
瀧島 開成高の社会の合格者平均点は38.2点と受験者・合格者ともに平均点の高さが目立ちました。ただし、受験者平均点と合格者平均点の差は例年よりもやや小さい程度であり、高得点勝負ながらもしっかりと差がつく問題だったといえます。漢字指定の語句記述問題での不要な失点や、4題と例年より多く出題され、他の問題よりも配点が高いと予想される記述問題での減点を避けることができたかどうかで差がついたと推測されます。
これに対して筑駒高は正答を「すべて選ぶ」形式の問題や記述問題が増えたことで、ここ2年続いていた易化傾向に歯止めがかかりました。また、戦後80年を題材とした大問が二つ続いたことで、公民に対して歴史の比重が重くなったことも印象的でした。
理科 近年の傾向
- 開成高:化学分野では、実験をより速く進める方法や理論値からのズレが生じた理由を問うなど、教科書の内容にとらわれない実践的な出題が続いている
- 筑駒高:計算量や情報処理量の多い問題が出やすい。日頃から「この解法には再現性があるか」などと意識するような学習を
社会 2026年 入試の特徴
- 開成高:受験者と合格者の平均点の差が開いた理由は、漢字指定の語句によるミス、記述問題の配点が多めだったことと推察
- 筑駒高:難度の高い「すべて選ぶ」形式の出題が3題に(近年は0〜2題程度)。また、公民の要素に歴史が加わり、全体的に歴史の比重が重く、公民が軽めの構成となった
早慶高
慶應女子高は現代文と古文を大問1・2で連動
早大本庄学院の数学はこの数年で高難度に
数学科教科長・髙橋 佳太座右の銘「一隅を照らす」
青木 続いて早慶高について。慶應女子高の国語で大きな話題がありましたね。
渡邊 大問1の現代文の情報をヒントに大問2の古文を解かせるという、分野を横断したような出題がありました。受験生によっては「必ず古文から解く」という人もいると思いますが、今回はその順番にしばられた人ほど苦戦を強いられたと考えられます。解く順番を含め、現場での柔軟な対応が求められました。
髙橋 慶應女子高の数学は近年、極端に難しい問題は出ず、易化傾向が続いています。今年も取り組みやすい問題が多く、高得点勝負だったと思われます。
青木 早慶高の中で、数学の難度が最も高いのはどこでしょうか。
髙橋 早大本庄学院ですね。以前に比べて難度がだいぶ上がっています。問題数が少なく、1問の配点が7~10点ほどあるため、解ける問題を見誤ると一気に点差が開いてしまう怖さがあります。
青木 早大本庄学院は、基本的には解答のみを記入する形式なので、いかに惜しい間違いでも、間違えれば0点。計算力も相当問われますよね。
数学 早慶高の対策指標
- 慶應女子高:SAPIXのテキストの★3レベルを完璧に仕上げ、失点を防ぐ完答力が必須
- 慶應志木高:合格をより確実にするなら★4レベルまで踏み込んだ対策が望ましい
- 早大本庄学院:1問の重みが7〜10点と高く、解くべき問題の取捨選択が合否に直結する
慶應女子高の英語でリスニングが6年ぶりに復活
早慶高全体では自由英作文の出題が増加
磯金 慶應女子高の英語では6年ぶりに予告なしでリスニングが復活しました。多くの受験生が戸惑ったようですが、基礎をおろそかにしていなければ対応できたはずです。また、最近の早慶高では自由英作文が増えています。テーマは非常に現代的で、かつ自分の意見を発信させる力が重視されています。知識のインプットだけでなく、社会問題や身の回りの事象に対して「英語で発信する力」を鍛えてきてほしい、という学校側からのメッセージが強まっているのを感じますね。
青木 慶應系では教科横断型の出題として、英語で理系の文章を扱うことがあったと聞いたことがあります。今も出題されているのですか。
磯金 かつては理科の知識が背景にないと厳しいレベルの出題が目立ちました。ただし、最近は純粋な理系トピックというよりは、もう少し社会科学や歴史的なエピソードに寄せた題材が増えている印象です。
例えば今年なら、アイザック・ニュートンをテーマにした文章で、一見すると理系と思わせるのですが、ロンドンの王立造幣局の局長に就任し、偽金作りを徹底的に撲滅したというエピソードでした。こうした「知っている人物の知らないネタ」を英語で読ませるという問題は、慶應系では今後も出されることがあるかもしれません。
英語 2026年 自由英作文の主要テーマ
- 慶應女子高:「下校途中に気付いた興味深い事柄」について
- 慶應志木高:「教師にとって重要な資質」についての自説
国立大附属高3校(筑波大附高、学芸大附高、お茶の水女子大附高)
社会は国立大附属高3校とも全体的に易化
一方、理科は全体としてはやや難化傾向に
社会科教科長・瀧島 一裕座右の銘「日々是好日」
青木 国立大附属高の3校はどうでしょう。社会からお願いします。
瀧島 3校とも取り組みやすいと感じる難度でした。筑波大附高は、例年多くの受験生が初見となるような資料を題材とした出題が多く高難度でしたが、今年はその傾向が薄まりました。学芸大附高は解答を公表することもあって、問題はスタンダードです。ただし、近年はマークシートの特性を生かして選択肢の数を増やすなど、難度を上げる兆候があるので油断はできません。お茶の水女子大附高は従来から一問一答形式で解答できる問題も多く、今年もその傾向は踏襲されていました。
大森 理科は難度が不安定ですね。筑波大附高は少し難化しましたが、それでも以前の「本質を問う」ような出題に比べれば、まだ基礎寄りです。学芸大附高はここ2年、難化が続いています。お茶の水女子大附高は得点源だった小問集合が減り、その場で考えるタイプの問題の比重が以前より増えています。
ただし、理科はいずれの学校もこの傾向の変化が近年の話なので元に戻る可能性もあります。幅広い対策が必要です。
青木 難しめの問題への対策も依然として怠れないということですね。
理科・社会 国立大附属高3校の出題傾向
- 学芸大附高(理科):大問数が8題と多い上、図や文章の情報量も多く、処理能力が求められる。一定量出される基礎問題をいかに速く解き、他の問題に時間をかけられるかが鍵
- 学芸大附高(社会):最大9択の多肢選択式。消去法が使いにくいので、正確な知識の定着が合否を分ける
- お茶の水女子大附高(理科):大問構成に変化。小問集合が減少した一方、その場で考える問題が目立つ
国語は複合読解が消え、従来型の形式に回帰
筑波大附高の数学は難度の高い良問
渡邊 国語は3校とも昨年より比較的解きやすくなりました。ただし、お茶の水女子大附高は、3校の中では頭一つ抜けて難しいですね。特筆すべきは、お茶の水女子大附高は今年、学芸大附高は昨年、「複合読解(複数の文章や対話文を読み比べる形式)」が姿を消し、従来の形式に回帰したことです。新傾向の要素がなくても十分に受験生の力を測れるという判断でしょう。
髙橋 数学では、筑波大附高で作図が約15年ぶりに出題されました。三角形の合同条件を授業でのやりとりのように深掘りする、会話文形式も特徴的です。他の2校もそれぞれ特徴が出ています。
磯金 英語の難度は3校とも昨年とほぼ変わりませんでした。その中では学芸大附高が一番難しかったです。筑波大附高は、現代社会のロボットの問題点を書かせるなど、「社会への視点」を問うところには国立大附属高らしさが出ていました。
数学 2026年 国立大附属高3校の特徴
- 筑波大附高:約15年ぶりに作図が出題。また、箱ひげ図など難度の高いデータの活用が大問として継続
- 学芸大附高:近年の特徴だった穴埋め、誘導形式がなくなり、オーソドックスな出題形式に。動点問題を含め、図やグラフを自分でかく力が求められる
- お茶の水女子大附高:毎年恒例の作図に加え、複雑な設定の文章題が定番化
MARCH高7校(明大明治高、明大中野高、青山学院高、立教新座高、中大杉並高、中大附高、法政二高)
英語で内容把握型の長文問題が増加
MARCH高の数学は7割以上の高得点が必須
青木 今回、特に厚く議論したいのがMARCH高です。英語の傾向が顕著だそうですね。
磯金 はい。MARCH高の英語の傾向は大きく三つに分かれます。
英語に器用に対応できるわけではない生徒がほとんどのため、振れ幅を持って勉強させるというよりは、目指す学校に向けての対策をしっかりすることが有効だと考えています。
特に注目すべきは長文を重視する学校です。配点の6〜7割を長文が占め、内容を把握できるかどうかで合否が決まると言っても過言ではありません。私はこの状況を「内容把握全盛時代」と呼んでいます。MARCH高では明大中野高がすべて内容把握系です。
青木 内容把握問題は、具体的にどんなところが難しいのですか。
磯金 「本文に当てはまるものを選びなさい」という問題が苦手な生徒は多いのですが、最近増えているのは「本文に当てはまらないものを一つ選べ」という形式です。例えば4択の場合、正解を一つ探せば済む通常の形式とは異なり、不適切な一つを特定するために他の三つの選択肢が正しいことをすべて本文から探し出し、立証しなければなりません。そのため、この消去法で削る作業は、「当てはまるものを一つ」探すことより、非常に手間と時間がかかります。こうした問題は「なぜ間違ったのか。なぜこれが正解なのか」という根拠を突き詰めて勉強していくことが必要です。
青木 数学はどうでしょうか。
髙橋 学校ごとの特徴はそれぞれ出ていますが、明らかに難度が高いのは明大明治高です。例年同様ですが、今年は合格者平均点の51点に対し、受験者平均点が38点と、大きく差が開きました。立教新座高もオーソドックスながらしっかり差がつく構成で、MARCH高の中ではこの2校が一線を画している存在です。早慶高に近いレベルといっていいでしょう。
英語 MARCH高7校の傾向
- 知識重視:明大明治高、法政二高
- バランス型:中大杉並高
- 長文重視:明大中野高、青山学院高、立教新座高、中大附高
数学 MARCH高の対策
- 最難関レベル:明大明治高、立教新座高。早慶レベルの対策が求められる
- 高得点必須校:上記2校を除く5校。7割以上の得点が合格への最低ライン
青山学院高の国語は古文を含んだ5題構成に増加
明大明治高では品詞に関する難問に悩まされる
国語科教科長・渡邊 侑介座右の銘「初志貫徹」
青木 国語はいかがでしょうか。
渡邊 今年、最も変化したのは青山学院高です。基本的に現代文2題と古文1題の3題構成が続いていましたが、昨年は漢字や知識のみの小問集合が1題追加されて4題構成になり、受験生が驚いたという経緯があります。今年はさらに、そこに文章題が1題追加され、5題構成へと変貌しました。設問数は調整されていますが、50分で現代文の文章題3題と古文を読み解くのは厳しく、現場で時間配分に戸惑った受験生もいたのではないでしょうか。
また、細かい点でいうと、今年の明大明治高では「単語分け」の問題が出されました。これは一つの文章を単語単位で区切らせる形式のものです。これまでにも連体詞や副詞など、特定の品詞について問う問題はありましたが、全品詞の知識を総動員しなければ解けない単語分けの問題が出たのは初めて。困惑した受験生もいたようです。
この形式は慶應女子高で定番となっている品詞分解に近い発想であり、そのレベルの学習をしていなければ対応は難しかったはずです。ただし、出題パターンが固定されている学校がほとんどなので、過去問を活用した時間配分などの対策は有効だったと考えています。
知識をストレートに問う形式は、早慶高よりMARCH高の方が出題される割合が高いといえます。慣用句やことわざなど、読解に関してはSAPIXの授業で対応できるものが多いのですが、受験者層を考えると知識面に不安がある生徒も少なくありません。漢字が書けない、ことわざを知らないといったことで、実際の入試で出鼻をくじかれることは十分に考えられます。
青木 MARCH高のどこを受けるかで、対策や勉強法は大きく変わりそうですね。
渡邊 国語の難度は青山学院高や明大明治高の他、明大中野高も少しずつ上がってきています。学校側がこれまでよりレベルの高い受験生を求めているのかもしれません。
磯金 明大明治高と青山学院高は、全体の難度は高い方だと思いますが、実は英語はMARCH高の中で低めです。むしろ全体の難度がやや低めの明大中野高の方が英語は難しく、早慶高の問題と交ぜても遜色ないほどです。そのため、偏差値だけで判断して「青山学院高より明大中野高へ」と安易に決めず、きちんと過去問を解いて、問題との相性を知ることが大切です。
国語 2026年 MARCH高の出題トピック
- 青山学院高:現代文3題+古文+小問集合の「5題構成」へ。過去10年で例のない分量。昨年から徐々に設問数が増加
- 明大明治高:全品詞の知識を総動員して問うような「単語分け」が初めて出題される。読解問題の選択肢も巧妙化している。本文の言葉をただ探すだけでは選べない、抽象的思考が求められる
進学指導重点校
電流と運動の問題が定番化していた大問に変化が
易化した社会は平均点が60点台に
青木 次に都立の進学指導重点校について。まずは理科と社会からお願いします。理科と社会は共通問題ですね。
大森 はい。理科の物理分野では大きな変化がありました。例年、大問6は電流と運動がほぼ交互に出題されるのが定番でしたが、今年は浮力が出題されました。これは2012年実施の学習指導要領で浮力が中学範囲に戻ってから初めてのことです。難度自体は高くありませんが、「ここは電流か運動が出る」と決め打ちをしていた受験生は足をすくわれたかもしれません。
瀧島 社会は学習指導要領の改訂とそれに伴う教科書のボリューム増大によって出題範囲が広がり、2022年に都立受検者全体の平均点が理科よりも10点以上低くなるなど、難化が目立っていました。2023年以降はこれを調整すべく易化が続き、今年もその流れを踏襲したため、都立受検者の減少に影響を受けなければ、都立受検者全体の平均点は60点台に乗る可能性が高いと見ています。
理科・社会 2026年 都立共通問題の注目点
- 理科:例年なら電力か運動が出題される大問6に浮力が登場。分野を絞った対策に頼らず、幅広い学習をおろそかにしないことが大切
- 社会:平均点は60点台が見込まれる易化傾向。ここ数年の難問・奇問が減り、実力が点数に直結しやすくなった
自校作成問題では各校の個性が顕著に
英語で理系の問題を解かせる学校も
青木 英語や数学における自校作成問題の各校のカラーの違いはどうでしょうか。
磯金 英語で理系の素養を強く求めるのが国立高と戸山高です。特に、国立高はフィボナッチ数列や二進法の暗号計算を英語で解かせるなど、学校側の強いこだわりが感じられます。その他の学校にも文理の色があります。
髙橋 数学も同様で、学校のカラーがしっかり定着しています。日比谷高や西高、青山高では会話文形式の問題が出され、定番化しています。この他の学校でも独自の特色が見られます。大問3まではどの学校も同じような形式で、大問4にカラーが出る場合が多いですね。
渡邊 国語も年々個性が際立っています。例えば、戸山高では要求される記述の文字数が非常に多く、青山高では時間制限の厳しい中で膨大な抜き出し問題が課されるなど、受検生にとって過酷な展開が目立ちます。作文の制限字数を200字から240字に引き上げた国立高や、自校問題作成校の中で唯一作文を出さない立川高など、特色が鮮明に分かれています。
青木 各校が生徒に求める素養は入試問題でしっかり測れるものですか。
渡邊 測れると思います。かつての日比谷高の国語は50分間常にせわしく解き続けなければならず、じっくり考える時間も取れない設定でしたが、現在はある程度落ち着いて作文に取り組めるようになっています。受検生が思考した結果をしっかりと得点に反映できる構成になっており、その分、純粋な実力差が出やすくなっているといえます。
青木 英語における日比谷高の一強感は今年も健在ですか。
磯金 やはり頭一つ抜けています。象徴的だったのが、「時間とは何か」を問う哲学的なテーマの長文です。2000年前の哲学者が「問われなければ“分かったふり”でいられるが、問われれば“答えを持ち合わせていない”」と自省する場面を英語で書かせる問題がありました。内容だけを見れば、筑駒高で出題されてもおかしくないレベルです。
「日比谷に入りたいなら、このレベルの問題が解けなければならない」という明確なメッセージが提示されているように感じます。今年は特に良問ぞろいで、真の実力者を選別できる素晴らしい構成でした。
英語 進学指導重点校 文理の傾向
- 国立高・戸山高:理系要素が強い
- 青山高:文系要素が強い
- 日比谷高:文系要素が強いが、今年は理系寄りの要素も見られた
数学 進学指導重点校の特色
- 日比谷高・西高・青山高:大問4の「会話文形式」が定着。思考のプロセスを追わせる構成となっている
- 国立高:例年、立体図形へのこだわりが強く見られる。作問者のこだわりも感じられる質の高い出題
- 青山高:伝統の「選択式証明」を継続。例年出題される
国語 進学指導重点校 出題傾向の違い
- 戸山高:記述の文字数が圧倒的に多く、高い筆記速度と要約能力が不可欠
- 青山高:大量の抜き出し問題を短時間で処理させる、極めてタイトな時間設定
- 立川高:自校問題作成校の中で唯一、作文を出題しない独自路線の出題構成
難関校を目指す皆さんへ
SAPIXの授業やテキストを活用し
試行錯誤しながら自分なりの対策を
青木 最後に、これから難関校を目指す受験生に向けて、SAPIXの授業やテキストを使ってどんな勉強をすべきか、各先生の視点でお聞かせください。
磯金 近年の入試の英語では、MARCH高、早慶高、開成高など学校を問わず、長文の内容把握能力が強く求められるようになっています。特に、2000語を超えるような長大な文章を試験時間45〜50分という短時間で読み切らなければならない学校もあり、読んでいる途中で冒頭の内容を忘れてしまう、というようなこともあります。日本語を読むときと同じように、英語を読みながら、文章全体で何が述べられているのかを頭の中で整理・分析する読解力と集中力が必要となります。
中学1~2年のうちは、まずは自分の好きなテーマの話を楽しむことから始め、英語を読むことに慣れてください。そうして培ったベースを、徐々に入試問題での実戦的な長文読解へとスライドさせていくのが理想的な学習の順序です。
また、SAPIXのテキストの特長は語彙も充実していることです。一つの単語についていろいろな意味を掲載しており、英語という言語を多角的に捉えられるように教えるので、語彙はもちろん、英語力そのものが強化できるようになっています。さらに、反復練習が手軽にできるよう、今年から「mikan」という英単語学習アプリも導入しました。SAPIXの英語はますます充実しています。
髙橋 数学全体の潮流として、小問数の増加、穴埋め・会話文形式などの「誘導形式」を採用する学校が増えています。初見の問題であっても、小問の流れから出題者の意図をくみ取り、行間を読み解いていく姿勢が問われています。また、正解を導き出すための粘り強さや、自ら調べて取り組む力も欠かせません。
現代は何でも調べればすぐに答えが出る世の中ですが、入試で求められているのは、未知の課題に対しても果敢に挑戦し、試行錯誤できる力です。SAPIXの授業では活発に解法を議論し合います。積極的に議論に参加して、さまざまな考え方を吸収しながら思考力を付けてほしいです。
先ほど筑波大附高のところで、「三角形の合同条件を授業でのやりとりのように深掘りする会話文形式の問題が出た」と話しましたが、これはSAPIXでは中1の授業でも当たり前のように行っていることです。こうした発展的な問題に対する考え方は授業の中でしか身に付けられません。自分の解き方にこだわらず、ある解法をみんなで共有したり、新しい解法を身に付けたりするなどして、出題者の意図を読み解く力が鍛えられるのがSAPIXの授業なのです。
渡邊 国語は、コロナやAIといった最新の時事テーマが一巡し、出題傾向は落ち着きを見せています。日頃の学習では、SAPIXのテキストを通じて新しい話題の引き出しを増やすと同時に、言語論や人間論といった普遍的なテーマにも向き合うことが重要です。過去問は直近数年分しか手に入りませんが、SAPIXのテキストには平成初期の良質な題材も含まれています。そうした古い素材からも学べることは多いため、一つ一つの文章のテーマに向き合って、深く吸収してほしいと考えています。
結局のところ、どの難関校においても最後は「読む力」に行き着きます。安易なテクニック論に手を出すのではなく、目の前の文章に対して実直に向き合い、丁寧に読み解くことを徹底してください。
授業は講師とのやりとりがポイント
入試の現場で柔軟な対応が可能に
大森 理科は都立高とそれ以外の学校で難度が異なります。都立高では、「一問一答」のような基礎知識を覚えることは当然として、問題文を正確に読み解く力を付けることが不可欠です。自分の知識と照らし合わせながら、分かっていることでも最後まで丁寧に読み、確認した上で解答する習慣を付けてください。
国立大附属高や私立高を目指す場合は、正解に至るまでのステップが多い応用問題を切り崩す訓練が必要です。基本的には現象への深い理解が問われるため、書いてあることをうのみにするのではなく、「本当にそうなのか」「他の知識との整合性は取れているか」と、常に疑い深く学びを深める姿勢が求められます。
さらに、情報量が増えるとミスのリスクも高まります。大切なのは単に「解けた」「解けなかった」で終わらせないことです。「もう一度同じプロセスをたどれるか」という再現性の高い解き方を常に意識して学習に取り組んでください。
理科という教科の一つの特性は、答えを単に覚えればいいのか、それとも背後にある理屈によって論理的に説明できるかを判別するのが難しいことです。その点、SAPIXでより知識のある講師と授業を通じてやりとりし、背後の理屈まで知ると理解が一層深まります。逆に、「これは理屈抜きに覚えるしかないよ」ということも伝えています。さらに、生徒の解答を受け、「それ、本当?」「その根拠は?」などと揺さぶりもかけます。こうした授業により、入試の現場で落とし穴に引っかからない力も身に付けてもらいます。
瀧島 社会では、その場しのぎの詰め込みではない、「時間をかけて自分のものにした知識」があるかどうかを試す問題が目立ちます。一問一答形式で用語を解答できても、その意味を説明させるとつまずいてしまう受験生が非常に多いのです。こうした問題に対応するには、一問一答形式で用語を覚えたら、次は逆にその用語から内容を説明できるように精度を高めていく学習が効果的です。
最近の生徒を見ていると、太字だけを視覚的に拾って覚えようとする傾向がみられますが、それでは文脈や背景を問われた際に対応できません。他の教科と同様に、しっかりと文章を読み込み、文脈の中で正しく知識を身に付ける必要があります。こうした力は短期間では養えません。「社会は直前にやればいい」というイメージを捨てて、1日も早く学習をスタートさせることが合格への近道です。
SAPIXのテキストは、主要な教科書の内容を網羅するとともに、入試で問われることをすべて盛り込んでいます。SAPIXのテキストをきちんと仕上げれば、入試に必要な要素をすべて取り込めます。
また、授業では発言してアウトプットすることを日常的に実践してもらっているので、説明系の問題に対応できる力も身に付けられます。
青木 SAPIXの授業は、講義形式ではありません。講師とのやりとりを通じて、その回のテーマをみんなで「考えていく」ということを意識しています。こうした学び方により、入試の現場でどんな問われ方をされても、柔軟に粘り強く対応できる力が鍛えられていくのだと考えています。SAPIXで学ぶなら、このように行われる毎回の授業を、ぜひ大切にしてほしいですね。