受験歳時記

[受験歳時記] 第8回「唇の動き」

羊羹(ようかん)とスイカ 数年前の4月1日、この日の朝刊に、社会人初日の新入社員に向けて〈鋭い切り口と尖った角がほしい〉といった内容の新聞コラムが載ったことがありました。その例として挙げられていたのは、羊羹でした。そこで…

[受験歳時記] 第7回「風船」〜心細さからの救い方〜

ガラスの前で 洋装店のショーウィンドウ。その前にぺたりと座り込んだ小さな女の子。お母さんがショッピングしている間、きれいに磨かれたガラスの表面に覚えたての文字をいくつも書いて遊んでいます。そこへ店の中から、若い女性の店員…

[受験歳時記] 第6回「シルキーボイス」〜声の音色〜

電車内にて 夜の電車内、つかまる吊り革の前の座席には2、3歳の小さな女の子が、その母親と一緒に座っていました。先ほどから車両の前の方で男性が2人、カバンを踏んだとか踏まないとかで、声を荒げています。成り行きを気にしつつも…

[受験歳時記] 第5回「お辞儀」~姿勢にこもる心の読み方~

黄色い傘 雨の横断歩道。信号の手前のわずかな窪みにも、あふれるほどの水たまりができ、小さな長靴も埋まってしまうのでしょう。小学生は、少しばかり道路にはみ出しながら青信号を待っていました。 一台の黒い車が放水車のように水を…

[受験歳時記] 第4回「体験記」~心のみちあと~

合格体験記 若い母親が、食卓テーブルに座りながらハガキを書いていました。すると、向かいの席からそれをのぞき込んでいた、漢字を覚えたての男の子が、こう声をかけたそうです。 「ねえ、ママ。幸っていう字って、逆さまにしても、幸…

[受験歳時記] 第3回「花の色、水の色」~親子で手にする高校受験という果実~

折り返しの色 「長時間にわたるケータイ機器使用、雑談、仮眠、読書、学習、瞑想はご遠慮ください」――コンビニの売り場横のイートインコーナーの注意書き。毎朝9時までは照明が落とされていますが、それでも女子中学生が2人、早々と…

[受験歳時記] 第2回 「雪ウサギ」~想像力と原理原則を理解する力~

2015年に開業した北陸新幹線。長野駅を過ぎて北信濃から県境にさしかかるあたりでは、毎年、この時期に「雪ウサギ」が現れます。山の中腹に消え残った雪がウサギの形に見えることからそう呼ばれていますが、不思議なのは、年によって雪や日差しの量が違うはずなのに、決まって山腹の同じ場所で「しゃがんだウサギ」の形に見えることです。同じ時期、同じ高さの所に雪が消え残り、人の創意では生まれえないアートが同じように描かれます。一見してウサギと分かる単純さ、平明さですが、毎年、必ずウサギの形に見えるように雪と光と土が織りなす仕掛けは、複雑、精緻の粋を極めています。

[受験歳時記] 第1回 「ふたつの手のひら」~祈りを包む手・願いを放つ手~

開門と同時に、舞浜の空高く湧き上がる歓声は、魔法の始まりを知らせるファンファーレのようです。ここは、東京ディズニーランド(TDL)。その全体マップを広げてみると、水をすくい上げるときの両手形のようで、過去を旅する左手から未来をのぞく右手へと、時間旅行も楽しめるのです。

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