文章量や設問数は例年並みで、昨年に引き続き記述問題の減少傾向が見受けられました。ただし、記号選択問題の難度は高く、時間的な余裕はないと言ってよいでしょう。また、多くの学校が大問4の説明的文章を自校作成問題に差し替えている点にも注意が必要です。
漢字の読み取り・書き取り
内容 | |
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共通 | 読み取り5問 書き取り5問 |
読み取り・書き取りともに難度が高く、取れるものを確実に正解することが求められます。近年の傾向通り、社会科で学習するような語句も問われているため、科目を問わず幅広く語彙を身につけなければなりません。中学生にはなじみの薄い熟語が複数出されている点にも注意が必要です。
文学的文章
内容 | |
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タイプA | 武田綾乃 『白線と一歩』 |
タイプB | 松浦寿輝 『川の光2』 |
タイプAは部活動をめぐる高校生の人間関係を描いた文章で、登場人物それぞれの心情の機微を読み取ることが求められました。タイプBは迷い犬を保護した家族のやりとりを描いたもので、文章を最後まできちんと読み取らないと解答できない設問を複数含みます。タイプA・Bともに、文章自体は読みやすいものの、記号選択の難度は高めであるため、選択肢を慎重に検討することが必要です。また、問6で文章表現の特徴について問われている点でも共通しています。
説明的文章
説明的文章 | |
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日比谷 | 河野哲也 『〈心〉はからだの外にある』 |
西 | 高坂正堯 『世界地図の中で考える』 |
国立 | 野矢茂樹 『心という難問』 |
八王子東 青山 |
小林道憲 『芸術学事始め』 |
戸山 | 中沢新一 『芸術人類学』 |
立川 | 苫野一徳 『「自由」はいかに可能か』 |
昨年までの傾向通り、複数の学校が大問4の説明的文章を自校作成問題に差し替えています。グループ作成の問題を含めて、文章テーマは多岐にわたっていますが、いずれも長めの文章で設問の難度も高く、時間的な余裕がないという点では共通していました。例年の傾向通り、この大問の出来が得点差を生み出したものと考えられます。今年も制限字数200字以内(日比谷のみ250字以内)の作文をいかに素早く処理できるかがポイントになったと言えるでしょう。条件を細かく設定している学校もあるため、注意が必要です。また、日比谷高や西高では作文に加えて記述問題が出されているため、いっそうの処理スピードが求められました。いずれのタイプの問題でも、抽象的で硬質な文章を短時間で読み解かなければならないため、しっかりとした対策が欠かせません。
古典を含む文章
古典を含む文章 | |
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タイプA | 鈴木一雄 『物語文学を歩く』 |
タイプB | 仁平勝 『日本の詩と季節』 |
タイプAは『竹取物語』の引用を含む文章で、引用箇所の直後に付されている現代語訳を参照しながら読み進めていくものでした。読解に高度な古文知識は必要ありませんが、古文に親しんでいると有利になる設問が含まれています。タイプBは日本人の季節感について論じた文章で、季語の知識があると読みやすいものでした。両タイプとも昨年に引き続き記述問題は出されず、記号選択を中心とする設問構成でした。あわせて、文法や語句の知識なども問われています。
まとめ
日比谷 | 西 | 国立 | 八王子東 | 戸山 | 青山 | 立川 | |
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漢字の読み取り | 共通 | ||||||
漢字の書き取り | 共通 | ||||||
文学的文章 | A | B | B | A | A | B | A |
説明的文章 | ※説明的文章の出題については、分析本文をご参照ください。 | ||||||
古典を含む文章 | A | A | A | A | B | B | A |
※表中A・Bは各問のタイプA・タイプBに対応する。