【SAPIX再発見】数学科編「数学は論理的思考力を育む入り口。間違いを恐れず、多様な解き方に挑戦しよう」

得意な人と苦手な人とが二極化しがちな科目といえば数学でしょう。一度つまずくと、苦手意識にとりつかれてしまうことも少なくないようです。近年、難関高校の入試では、計算力や思考力だけでなく、読解力を試す問題も出されるようになりました。そうしたなか、数学の力をどのように伸ばしていけば良いのでしょうか。日々の学習のポイントと数学を学ぶ楽しさについて、SAPIX中学部 数学科教科長が解説します。

近年の難関高校入試で求められる力とは

近年の難関高校入試では、読解力が必要となる問題が目につくようになりました。今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、出題範囲を縮小した学校が多くありました。そんな条件下で、入試問題をどう作成するかというところから読解力を問う発想が出てきたように感じられます。もちろん、記述力・表現力重視を掲げる大学入試改革も影響していると思います。

受験生に求められる力が大きく変わったとは感じていませんが、問題をきちんと読み、何が問われているかを把握する力が必要になると思います。これまでも計算力や思考力を問う出題はありましたが、今年は一言で言えば思考力を問う前に、まず設定をしっかり読み取るための読解力が必要となる問題がみられました。問題文を読んで、設定やテーマを把握した上で取り組む必要があり、問題を解く前のステップが一手間増えた印象です。

出題傾向の変化に対応できる力を伸ばすには

そうした力を伸ばすには、型にはまった解き方だけでなく、自分でいろいろな解き方を試してみると良いでしょう。こんな問題はこう解くと楽だったとか、こう考えるとやりにくかったとか、失敗も含めて経験しておくことが大事です。

数学では、結論に至るアプローチはいくつもあります。関数の問題でも、図形を使って解いたり、数式だけで処理したりと、さまざまなやり方を経験しておくと、たとえ見たことのない問題でも自分の経験から解き方を考え出すことができます。

シンプルな問題ほどさまざまな解き方があるので、SAPIXでは特に中1・2のうちは授業でできるだけ多様な解法を示すようにしています。この問題はどうやって解くか。こうもできる、ああもできるとやりとりをしながら、誰もが納得できる解き方や考え方に導くのがSAPIXの数学の授業です。最初から最短の道を教えてしまうと、その解き方しかできなくなりますし、問題を少しアレンジされただけで全く対応できなくなってしまいます。

そして、いろいろな解き方をする上で大切なのは、諦めないこと、粘り強く考えること、間違いを恐れないことです。間違えるのが嫌で手が止まってしまう生徒もいますが、とにかくやってみることが大事。やってみてうまくいかなくても、なぜうまくいかなかったのかを考えることが次に生きるからです。こうして、いろいろな解き方をやってみた後に最良の解法を見せると、その解き方をしていなかった生徒は感動します。自分が苦しんだ分、記憶に残るのです。それもこれも失敗しないことには気付けません。

もう一つ大事なのは、復習です。自分はなぜ解けなかったのか。解き直して、着眼点や気付きのポイントを確認するのが重要です。復習しても分からないときは、質問しにきてほしいですね。

SAPIXが数学の授業で大切にしていること

SAPIXでは、何よりもまず、「授業を受けていただくこと」が最も重要だと考えています。解き方を一方的に教えるのではなく、やりとりをしながら「一緒に考えていく」という双方向型の授業がSAPIXの最大の特長です。生徒が自分で考えながら授業に参加するので、気付いた考え方や解き方を自分の中にしっかり落とし込むことができます。

そうした授業で大切にしているのは、生徒が持つ「何で?」という疑問ですね。着眼点やアプローチには全て理由があります。そこに気付いてもらえるように導いていくのが私たちの仕事です。15分も20分も一つの問題で悩んだ後に、パッと解けるやり方を見せてその理由を示すと、生徒たちは得心します。自分で考えに考えて、その結果として気付きを得ることが大事なので、毎回そうなるように授業をしています。

ですから、生徒には間違いを恐れないでほしいと常日頃から伝えています。とにかくアタックしてみる。何回もつまずくかもしれませんが、その回数が多ければ多いほど、最終的にはしっかり自分で気付けるようになります。

なお、テキストは、最新の出題傾向や授業中の生徒の反応を反映させて毎年調整しています。教材専門の担当者はいません。実際に授業をしている私たちが作成している点こそ、SAPIXならではの強みだと思います。

カリキュラムも生徒の理解が深まるように工夫しています。学校の教科書は各分野をバランス良く扱うように作られていますが、その分どうしてもぶつ切り感があります。SAPIXではそれぞれの学習内容がつながる流れにしています。ですので、学校では中3で学習する内容を中1で学ぶことがあっても理解しやすいのです。また、一度学習した単元も、見せ方や扱い方を変えて繰り返し扱うようになっています。中2が終わる段階で中学3年分のカリキュラムを消化するので、中高一貫校と同じような進度になっています。

数学で身に付けた論理的思考力は、将来あらゆる場面で生きてくる

中学の数学は論理的思考の入り口です。算数は具体的なものがあってそこにイメージを直結させますが、数学はもっと抽象的です。例えばマイナスの数は目の前にはありませんが、概念的には存在します。文字式も同様です。その次に出てくるのが関数で、中学受験を経験していてもこのあたりで数学に苦手意識を持つ生徒が増えてきます。

そのため、SAPIXでは関数を学ぶ中1後半から中2前半にかけてはかなり手厚く指導します。形を変えながら繰り返し解き、繰り返し考えてもらうことで、抽象的な概念について理解を深めていきます。そうやって身に付いた論理的思考力は、将来のさまざまな選択や判断の場面で役立つ重要な力になると考えています。

数学の魅力は解答に対してさまざまなアプローチがあること

私が数学を好きになったのは、最初は単純に何となく得意だったからです。そして、気が付くと誰にも負けないようになったので、数学を勉強して生きていけたらいいなと大学の数学科に入りました。しかし、本当に好きになったのは、解答に対してさまざまなアプローチがあることが面白かったからです。

SAPIXでも生徒みんながそんな面白みを感じてくれたらいいなと思って授業をしています。「自分はこう考えた」「それよりこういう解き方が良いのでは」といった議論ができるのも数学ならではでしょう。その意味でも、授業は真剣勝負。できるだけ多くの視点から考えたり、多様な解き方をしたり、友達の発言に刺激を受けたりしながら楽しんでほしいですね。

なお、過去に私自身が衝撃を受けた数学の問題は、「1+1=2」の証明です。数学科に入学して最初の課題がこれでした。小学生でも理解できる内容ですが、そもそも「1」とは何か、「足す」とは何かという定義を一つ一つ組み立てて証明しなくてはなりません。当たり前のことのようで、とても難しい問題です。数学はそれくらい緻密で精密な議論の上に成り立っている学問なのです。その緻密に組み立てられたステージのごく一部を勉強していたのだと気付き、衝撃を受けたことを覚えています。

難関高校を目指す小・中学生にメッセージ

どんな言語で書かれていても、数式や論理記号はほぼ世界共通です。言葉が分からなくても、何が書いてあるかは読み解けるので、数学は非常に面白い学問です。偉大な先人が挑戦し続けても、100年も200年も解決できていない問題もあります。これもまた面白いことです。

SAPIXでは数学を好きになってほしいと思って授業をしています。自分で手を動かし、間違えても構わないのでいろいろなやり方に挑戦していると、考えることが少しずつ楽しくなっていくはずです。ぜひ、数学を好きになってほしいですし、SAPIXの授業を受ければきっと好きになってもらえると自信を持っています。

数学を嫌いになる理由の一つは、答えが出ないからです。そうなる場合の多くは、「覚えてきたものが使えない」「どう解いたらよいのか分からない」から。しかし、数学は解き方を覚えるのではなく、アプローチを考える学問です。いろいろ試してチャレンジしてほしいと思っています。

ページトップへ