【2021年 高校入試総括】「安全志向」と「地元重視」で受験倍率低下も、公立・私立ともに上位校の激戦の様相は変わらず

新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたこの1年。オンライン授業など、通常とは違う学習環境に戸惑った受験生も少なくなかったことでしょう。例年とは異なる状況下、今春の首都圏における高校入試にはどのような傾向が見られたのでしょうか。志願者数の増減などを切り口に、森上教育研究所・高校進路研究会代表の佐藤潤平先生にお話をうかがいました。

受験者総数とチャレンジ層の減少で、多くの学校で倍率が低下

――今年の高校入試の特徴から聞かせてください。

佐藤 まず挙げられるのが「安全志向」です。早慶高、MARCH附属校の多くが志願者を減らしました。その学校を第一志望とする受験生ではなく、チャレンジ層が回避したものと思われます。その背景には、今年は中学校の授業や模試が通常どおりに行われなかったことによる自身の学力への不安、入試問題の出題範囲への不安、内申点の基準への不安などがあったと考えられます。

もう一つのトピックは「地元重視」です。学校選択において、通学にかかる時間や通学経路の混雑具合などを考慮した様子をうかがうことができます。

最難関校を除き、上位校や上位中堅校で志願者を減らした学校が多く見られたこと、地元志向が高まったこと、いずれも新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったように思われます。

――それでは都立高校から振り返ってください。

佐藤 進学指導重点校では、日比谷は〝高位安定〟。立川や八王子東の男子が増え、西や国立が減少しました。全体ではやや減ってはいますが、安定していたと見るべきでしょう。

進学指導特別推進校では、駒場や国分寺が志願者を増やし、人気が戻ってきました。後述しますが、これはMARCHへチャレンジしていた層が流れてきたと思われます。

一方で、集団討論がなくなったこともあってか、推薦の倍率が大幅に上昇しました。私立校でも単願推薦に受験生が集まっており、早めに決めたいという心理が今年も働いたようです。

――神奈川や千葉の公立校はいかがでしたか。

佐藤 神奈川の学力向上進学重点校は、前年の〝揺り戻し〟と見られる柏陽以外は、横浜翠嵐をはじめ各校とも倍率が上がりました。上位重点校でも、緑ケ丘や多摩の人気が高まっています。早慶やMARCHなど難関私立大への合格実績が評価されているのではないでしょうか。

今回から前後期制を廃止した千葉は、東葛飾や県立船橋など上位校は高い倍率を維持した一方、地方を中心に6割の学校が定員割れとなり、公立から私立への流れが一層加速しています。

早慶、MARCHは志願者を減らしたものの第一志望とするコア層は変動なし

――早慶の附属・系属校の志願状況に変化はありましたか。

佐藤 早慶は、慶應女子を除いて軒並み志願者を減らしています。分析すると、公立上位校との併願者が回避したと思われます。早大本庄学院、慶應志木、早大学院は、神奈川県からの受験生が減った可能性があります。また、中学校の臨時休業を受けて、公立高校などが出題除外範囲を設けた一方で、早実を除く早慶は出題範囲に関する発表がなかったため、不安を感じて避けた人もいるでしょう。

――MARCHはいかがですか。

佐藤 「安全志向」で、早慶を回避する人がMARCHに流れるだろうと予測していたのですが、MARCHも減らしました。近年、人気が上がり続けていたので、いったん落ち着いたという見方もできます。

青山学院と明大明治は人気継続、法政大学と中大横浜は去年減った反動で戻りましたが、それ以外の多くの学校で志願者が減りました。減少した層は、おそらく都立の進学指導特別推進校などへ流れたのではないでしょうか。

当初予測していたように、早慶を回避した人たちはMARCHに〝移動〟したはずなのですが、MARCHへのチャレンジ層が都立に流れたことで、結果的に早慶、MARCHとも志願者を減らす結果となりました。早慶へのチャレンジ層がMARCHに、MARCHへのチャレンジ層がさらに都立へという構図で、これも〝安全志向〟が働いた結果だと思います。

――その他の学校はどうでしょうか。

佐藤 最難関校では、筑駒はここ7年で最多の志願者を集めました。去年減らしたお茶の水女子大附属は、志願者が戻ってきました。開成も安定しています。これら最難関校は目指す層が常に一定数おり、外的要因で難易度が左右されることはほぼありません。

その他、個別の学校に目を向けると、巣鴨と城北が人気を集めました。巣鴨は5科3科の選択制になり、開成との併願生が増加したものと思われます。本郷が今年から高校募集を停止したのも両校が受験者を増やした要因かもしれません。そうした意味では今年が最後の募集となった豊島岡女子の志望者層が来年どこへ流れるのかに注目です。同校へのチャレンジ層が、近年受験生のレベルが上がっている淑徳などに流れる可能性も考えられます。

学校別に見た受験者割合の推移(一般入試/首都圏)
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減少した上位校の揺り戻しがあるかコロナで来年の動向はやや不透明

――来年の入試動向についても一言お願いします。

佐藤 上位校へのチャレンジ層が戻ってくるかどうかが最大のポイントだと思います。気になるのは、やはり新型コロナウイルス感染症の収束具合です。今年の反動で一定数戻ってくるのは間違いありませんが、来年も「安定志向」「地元重視志向」がどの程度働くかはまだ読めません。

しかし、早慶にしろMARCHにしろ、動きが見られるのはそれらの学校へのチャレンジ層で、第一志望にしているコア層に大きな変動はなく、難易度は大きくは変わらないでしょう。

――最後に、受験生へ向けてアドバイスをお願いします。

佐藤 学習指導要領が改訂され、来年から高校で「情報」の授業が始まります。問われるのは考える力なので、来年の数学や理科の入試問題に、思考力を問う仕掛けが入ってくる可能性があります。考えた過程をノートに残す学習習慣を付けておくと良いと思います。

森上展安先生からのアドバイス

今年は中学受験でも「安全志向」と「地元志向」が見られましたが、小学生と比べて中学生はオンライン学習への対応力があり、高校受験の方がコロナによる影響は抑えられたような印象です。コロナ禍でも学習の積み上げは可能なはずです。志望校の難易度の変化を過度に気にすることなく、やるべきことにしっかり取り組んでいただければと思います。

森上教育研究所所長・森上展安先生(右)
高校進路研究会代表・佐藤潤平先生(左)

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