[受験歳時記] 第52回「生きた教材」

電話相談室

昔、電話相談室というラジオ番組で小学生と回答者の先生とのこんなやりとりがあった。「心ってどこにあるの?」「どこだと思う?」「頭の中かな?」「そこはコンピュータだね」「心臓の中かな?」「そこはエンジンだね」「う~ん、どこだろ?」「きっと見えない場所でずっと君を支えているはずだよ」「あっ、分かった!足の裏だね!」「ご名答!」 回答者はアドリブだったらしいが、答えを導いたのは小学生の質問の良さ。純で素朴な疑問が、この名答を引き出したのだろう。

創作漢字

スクエア206号のお便り募集。今回のテーマは「自分を漢字1文字で表すと」。自分を動物や色に例えたり、座右の銘で示したりすることはあるが、自画像を漢字1文字で描くのは、答えを書いては消し、書いては消しを何回も楽しめそうな課題である。

そして、寄せられた応募回答のなかに一つ、「高」と「挑」を組み合わせた漢字があった。見晴台に見立てた「高」の下部から「挑」のつくりの「兆」の右のはねが飛び出した創作漢字で、応募した生徒のコメントによれば高い声音に自信があるとのこと。ジャッジ方式よりスカウト方式の方が楽しい反応を呼び込むので、お便りをどしどし募ることが目的で、優劣をつけるコーナーでは決してないのだが、さすがにいろいろな意味をくみ取れそうなオリジナル性の高い回答には編集部一同も感服とある。雲の高さに届く歌声を「高唱入雲」と呼ぶそうだが、きっとこの漢字の創作者も、雲間にまで響く伸びやかなハイトーンボイスの持ち主なのだろう。

名木

漢字といえば、その順番を入れ替えるだけで意味の異なる代表例の一つに、「木材」と「材木」がある。加工前なら「木材」、加工後なら「材木」だそうで、運び込まれた原木は木材から材木へと加工された後、製品向けの用材にあてるという順になるらしい。田中将大投手が楽天に復帰したが、球団内外に与えるその影響の大きさを聞かれ、チーム監督は「生きた教材」と答えていた。プロ野球選手ならすでに全員がとびきりの用材揃いだろうが、そんな彼らにとってさらなる教材となる存在とは、どれほどの香気を放ち年輪を刻む名木なのか、ぜひとも年間を通じて注目したいところだ。

ところで、その田中投手と同じ企業グループで働く実社会人が、やはりスクエア206号のなかでインタビューに応えているが、読み手である中学・高校に通う生徒にとって、これこそ願っても無い「生きた教材」である。現実社会に完全にアジャストし、さらにリードしていく立場にある人物のなかでは、徹底的に掘り下げて学ぶ姿勢と目の前で動いている事業とが、融通無碍に四六時中、往復連動し合っているのがよく分かる。多くの先輩たちや「生きた教材」が教えてくれるものは、合格、そしてその先へということの意味と価値であろう。それは言い換えれば、掘り出された金のままでいるよりも、磨かれた銅になろうと常に努力することの方が、生きることの意義をはるかに深いものにしてくれるということなのかもしれない。

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