2020年度より小5・6の「英語」が正式教科に。これからの小学生に必要な英語学習とは?

文部科学省は今年3月、2020年度より実施される小学校の次期学習指導要領を公示し、小5から英語を正式教科とすることとしました。2018年度からは、次期学習指導要領に基づく教育課程の先行実施が可能となります。ここでは、英語教育の最新の状況と、小学生に必要な英語学習について、SAPIX中学部・英語科の當山淳が解説します。

小学校の段階で4技能を重視。小5から試験対策が必要に

次期学習指導要領の実施に伴い、小学校の英語教育はどう変わりますか。
現在、小5・6を対象に週1コマ実施している「外国語活動」が小3・4から導入されます。そして、小5・6は正式教科になります。これが最大のポイントですね。これまでの「外国語活動」は、基礎的な会話を通して英語を「聞く」「話す」体験に慣れ親しみ、言語や文化への理解を深めることを目標としていました。次期学習指導要領ではこれに「読む」「書く」を加え、英語の4技能を使った言語活動が行われます。その目標は、「コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力の育成」です。実は、これは現行の中学校の学習指導要領に書かれている内容とほとんど同じです。つまりレベルがそれほど一気に上がるのです。
小学校での次期学習指導要領への移行スケジュールを教えてください。
全面実施は2020年度からですが、2018年度からは、次期学習指導要領に基づく教育課程を先行して実施することが可能となる見通しです。つまり、小3・4の「外国語活動」、小5・6の「英語」とも、一部の小学校では来年4月から開始されます。しかし、現時点(6月)ではどの小学校が先行して授業を始めるかは分かりません。
カリキュラムはどうなりますか。
連語や慣用表現を含め、習得する英単語数の目標は、小5〜6の2年間で600〜700です。これは現行の中学校段階の目標語彙数1200語の約半分です。文法は、小5・6の段階で疑問詞、代名詞、動名詞、助動詞、動詞の過去形などを使った基本的な表現を学びます。現行の中1で学ぶ内容が多く含まれるため、次期学習指導要領の実施に伴い、中学校で学習する内容や進度も変わるでしょう。

中学校段階で学ぶ語彙も現行より3〜5割増加

中学校の英語は今後、どのように変わりますか。

次期学習指導要領では、中学校段階の目標語彙数が現在の1200語から1600〜1800に増えます。さらに、これまで高校課程で学習していた仮定法や原形不定詞などの文法事項も加わります。中学校では2021年度より次期学習指導要領が全面実施されますが、2018年度から新課程の先行実施が行われます。小学校での先行実施もあるため、英語を教科として学んだ子どもとそうでない子どもが同じ中学校に入学する可能性があるわけです。中1の時点で英語に学力差が生じるという問題が懸念されます。もちろん、英語に限らず、どの科目も長く学び続ければ力がつくため、先行実施をしていた小学校で小5のときから英語を本格的に学習した生徒のほうが当然、高校受験で有利になります。

学習指導要領 単語数指針

[学習指導要領 単語数指針]

次期学習指導要領の影響で高校入試の英語が難化

高校入試にも影響は出てくるのでしょうか。

やはり、英語の入試問題は難しくなるでしょう。高校の次期学習指導要領の目標例として「新聞記事を速読してその場で内容を把握し、議論ができるようになる」という文言があります。つまり、従来のように英単語を丸暗記して語彙を増やしたり、その場で英単語の意味を調べて日本語に訳したりする学習法だけでは身につけられない力が求められます。英文を速読して掴んだ全体像から、書かれている意味の概要を理解するというような、高い目標が設定されているのです。

その影響からか、開成高などでは英語以外の科目の知識を総合して解くタイプの問題をいち早く入試に取り入れています。また、都立西高の2017年入試では、長文読解で高校生も意味を知らないような英単語が正解を導く鍵となりました。これらは文章の全体像から英単語の意味を類推して解くタイプの問題です。

また、早慶高をはじめ、一部の大学の附属校の入試問題にも同様の変化が見られます。例えば、早実高は、物語文を用いて心情を問う問題に特徴がありましたが、ここ数年は説明文の出題が多くなり、2017年は食物連鎖をテーマにした理科系の長文が出ました。中学生には難解な英単語もありましたが、理科の知識を活用して文脈からその意味を類推すれば解ける問題でした。英単語の暗記に頼るのではなく、その場で考え、判断して解答を導くのです。

現状を踏まえると、小5からはどのような英語学習が必要になるでしょうか。

「読む」「聞く」に集中していた従来の中学校の英語教育における問題を改善するため、これまで小学校では「聞く」「話す」に特化したかたちの「外国語活動」が行われてきました。しかし、今後は社会のグローバル化に対応するため、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能をバランスよく高めなくてはなりません。

また、英単語は意味を覚えるだけでなく、発音を聞いて正しいスペルで書く力も必要です。実際、新中1生に「キリンは英語で何というの?」と尋ねたとき、「giraffe」ときれいな発音で答える生徒が、一方では黒板に書いた簡単な英単語が読めないこともあります。このような弱点を克服するため、「読む」「書く」の学習を強化する必要があるでしょう。

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