[受験歳時記] 第4回「体験記」~心のみちあと~

合格体験記

若い母親が、食卓テーブルに座りながらハガキを書いていました。すると、向かいの席からそれをのぞき込んでいた、漢字を覚えたての男の子が、こう声をかけたそうです。

「ねえ、ママ。幸っていう字って、逆さまにしても、幸だね」

住所のうちの一文字を指差してのことだそうですが、何か、すごく深いことを言われた気がして、お母さんは忘れられなかったそうです。

受験という大きな出来事を超えると、そこまでの山あり谷ありの、あれこれから、たくさんの言葉が湧きおこります。SAPIX中学部の卒業生による「合格体験記」にも、中学生の何げない言葉の中に、受験生ならではの実感のこもったフレーズが数多く見受けられます。

校舎に貼られた日めくりカレンダーの残り枚数が、毎日、すごい速さで減っていく、と感じていた女子生徒は、獅子に狩られたウサギのように追いつめられた心境だったことでしょう。自分の番号が無かったショックを隠したい一心で、合格したかのような素振りで発表会場を出てきたら、「おめでとう、次は大学受験だね」と声をかけられたという男子生徒。彼の心の中に渦巻いた、そのときの屈辱感は、行間から噴き上がってきます。しかし、翌日の最難関と言われる高校に見事に合格を果たし、「幸は、ひっくり返っても幸になる」ことを証明してみせたのでした。ただし、前日の不合格と、翌日の別の高校の入試との、このわずか一昼夜の間、彼の心の中に吹き荒れた暴風雨、気持ちの整理、負けじ魂の立ち起こし方などなど、学ぶところがあまりに多い気もします。

「合格体験記」は、思い出をつづる卒業文集ではありません。受験の真っただ中、日に日に煮詰まっていく自分の中の思いを、赤裸々につづっていく孤軍奮闘記であるはずです。大きな自信を手にするためには、再三再四の窮地が必要なのだと体得するまでの生々しいドキュメントです。この世代の、この時期に、この体験を文字でしっかり書き残しておかなければ、せっかくの高校入試がセレモニーで終わってしまいかねません。

保護者体験記

同時刊行の「保護者体験記」では、我が子の必死にもがく姿を、手をこまねいて見ているしかない親御さんのつらさが、そこかしこに描かれています。受験初日、子どもに付き添って乗り込んだ電車が大雪で立ち往生し、襲い来る不安に心が折れそうだった、という悲鳴。それでも試験会場に乗り込んだお子さんは合格通知を持ち帰ってきています。また、あるページでは、連日入試で合格ランプがともらず、翌日には別の入試会場に向かわねばならない受験生が、ここにも登場します。我が子の背中に、かけてあげる言葉がない。ところが、そんな負けられない試合を、この生徒は勝ち抜いて帰ってきます。親の心配をよそに、どんな悪路も切り抜けています。どんなに引っくり返った幸も、土俵際で打っちゃって、福に転じて、帰って来る、彼ら子どもたちの必死さは、晴れがましく胸に残ります。

そして、やはり心に留まるのは、合格発表の瞬間です。自宅に居ながらにして、家族全員で開くWEB発表。自分の合格番号を見つけた直後、お母さんの目の前で大粒の涙をぽろぽろと流しながら、娘さんはこう言っています。―「うれしくても、こんなに涙が出るんだね」

子どもの成育には「多様な関係」が欠かせません。それは、多くの中で「もまれる」ことでしょう。保護者の方が、お子さんを塾という環境の中に置かれているということは、教育の重要な一つの要素―いずれ分かることを、今伝えておくこと―を、受験を通して実践されたということなのではないでしょうか。

2017年・28期生「合格体験記」「保護者体験記」のご案内

2017年・28期生「合格体験記「保護者体験記」は、以下のスケジュールにて、掲載・配布予定です。

WEB版 掲載開始 冊子版 配布開始
合格体験記 5月上旬 予定 5月下旬 予定
保護者体験記 5月中旬 予定 5月下旬 予定
  • WEB版はSAPIX中学部ホームページにて掲載/冊子版はSAPIX中学部 各校舎にて配布します。
  • スケジュールは変更となる場合があります。
  • 詳細は引き続きホームページにてお知らせしてまいります。
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